所変われば本違う。
台湾で出版されている本たちは、日本の本たちと、いろんなところがいろんなふうに違うもの。
いったい、どこがどういうふうに違うのか、台湾人が見る違いを一つ一つご紹介していきます。
次に台湾へ行ったら、ぜひ書店を歩いてみてください。

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台湾人の疑問

文=黄碧君

「あの小さい本は何だろう」
筆者が日本に留学していた頃、
電車の中で見かけて気になったのが
車内でみんなが手にしている小さな本でした。
後になって、その小さな本を「文庫本」と呼ぶのだと知りました。

そう、台湾の出版物には日本のような文庫も新書もありません。
単行本、新書、文庫といった分類に慣れた日本の皆さんにとっては
「え、文庫がないの?」
と新鮮な感覚を覚えるかもしれません。

台湾の本は基本的には全部単行本です。
新書と文庫のサイズはほとんどありません。
判型は結構バラエティーがあって、大きい判型もめずらしくなく、
日本の文庫や欧米のPaperbackのような、手軽な作りはまずないのです。
どちらかというと中身もぎっしりで一気に読めそうもない本に人気があります。
そういう作りではないと「読者が買ってくれない」と台湾の編集者はいいます。
1ページの文字数が少なすぎたり、絵と少しの文字しかなかったりすると、
全部立ち読みで読み終わらせてしまうからです。
それに、よっぽど気に入らなければお金を出そうとしません。
利口というか合理主義というか、財布の中身の計算が厳しいのです。
さらに、台湾人にとって本を買うことは、単に読むという目的だけでなく
書斎の本棚に飾ることや自分のコレクションに加えることも考慮しています。
なので、本は大抵重くて作りもやや派手な傾向があります。
日本の出版関係の方と新しい本についてお話ししていると
「ある程度決まった判型でないと、本屋に置いてくれない恐れがあるんです」
という話を聞きます。
でも、台湾の書店はさほど気にしていないんです。
本棚の並びは、多少見た目が悪くても、ぴったり収まらなくても、
読者が買ってくれるならそれでいいのです。
「差不多就好,隨便就好」(だいたいでいい、適当でいい)
ただこれ、国民性にも関係あるような気がしますが。

移動と読書の関係

昔から台湾に本を持ち歩く文化や習慣があまりないのは、
都市交通の建設が遅れたことと関係があると筆者は考えています。
最近、MRTと呼ばれる台北市内を走る鉄道が徐々に整備されてきましたが、
全体の距離はそれほど長くありません。
たとえば、台北中心部の台北駅から、夕暮れの観光スポットとして有名な淡水駅までは、
全部で18駅、30分ほどで到着してしまいます。
MRTより発達している交通網としては市内のバスがあります、
揺れが激しく本を読むのにはまるで適していません。
一方、台北以外の地方はバイクと車社会です。もちろん本が読めません。
そう考えていくと、台湾において移動中に時間がある程度確保できるのは、
遠距離の鉄道列車だけ、といってもいいかもしれません。

日本の東京のように、通学通勤の途中で
みんなが黙って新聞を読んだり本や漫画を読んだりしている光景を、
台湾であまり見かけないのはそのためです。

日本では活字離れといわれているそうですが、
台湾と比べれば読書する人はまだまだ多いのではないでしょうか。

トリセツ#2はこちら→

黄碧君(ふぁん・びじゅん)
ellie
1973年生まれ、台湾人女性。書籍翻訳・通訳家。大学卒業まで台北で暮らした後、日本の東北大学に留学、その後はアメリカ語学留学、結婚を経て、現在は日本人夫と台北で暮らす。台北で書店や版権仲介会社の勤務経験をもつ。全国通訳案内士、沖縄地域通訳案内士の資格を取得。2012年、日本人に台湾本の多様性と魅力を伝えるべく、台湾書籍を提案・翻訳・権利仲介する聞文堂LLC合同会社を設立。本は生涯の最良養分と信じて、台湾本のコーディネートと日本全国を旅するライターを目指す。
【主な翻訳作品】
辻仁成・江國香織『恋するために生まれた』幻冬舎、(中文題『在愛與戀之間』皇冠出版社)
寺山修司『幻想図書館』河出書房新社(中文題『幻想圖書館』邊城出版社)
奈良美智『ちいさな星通信』ロッキング・オン(中文題『小星星通信』大塊出版社)
青木由香『奇怪ねー台湾 不思議の国のゆるライフ』東洋出版(中文題『奇怪ね』布克文化出版社)
杉浦さやか『週末ジャパンツアー』ワニブックス(中文題『週末日本小旅行』時報出版社)
荻原浩『あの日にドライブ』光文社(中文題『那一天的選擇』商周出版社)
島田雅彦『エトロフの恋』新潮社(中文題『擇捉島之戀』台灣商務出版社)
三浦しをん『舟を編む』光文社(中文題『啟航吧!編舟計畫』新經典出版社)
松浦弥太郎作・若木信吾写真『居ごこちのよい旅』筑摩書房(中文題『自在的旅行』一起來出版社)
角田光代『あしたアルプスを歩こう』講談社文庫(中文題『明天散步阿爾卑斯』(仮)日出出版社)など。