interview

もっと台湾(以下、も):サイエンス関連書物以外に、別のジャンルの書籍は読みますか。
ストーン(以下、ス):小説や漫画を読むのも好きです。
小さいころは倪匡(ニー・クァン)1のSF小説と
金庸の武狭小説2が好きでよく読みました。

:倪匡や金庸の小説は中華圏の子どもたちはみんな読んでいる小説かもしれませんね。
:やっぱり男の子は武狭小説が好きですね。
女の子は武俠小説を読むかどうかわからないですけど……
倪匡は女の子でも読んでいる子は多いかもしれません。
彼ら二人はある特定のジャンルの小説を書いていますが、
文章表現が豊かで、美しい文章を書く作家です、そこにとても引かれます。

:小さいころに読んだ本で最も印象深い書籍は何ですか。
:『藍血人』3です。倪匡の作品です。
確か小学校5、6年生の時に読んだ小説です。僕の伯母さんは小説が大好きで、
家には倪匡と金庸のすべてのシリーズが揃っていました。
また、家には倉庫があって、そこには伯父さんの大学時代の教科書や
読み終えた小説が並べてありました。
だから時間があればその倉庫に入って本を読みました。
小さい倉庫だったので、座れるスペースは一人分しかなく、
誰にも邪魔されることなく本の世界に浸れる空間だったんです。
倉庫で読み終えられなかった本は学校に持っていって読みました。

:先ほど挙げていただいた作家以外に好きな作家はいますか。
:イタリア人作家のイタロ・カルヴィーノ4が好きです。
特に『見えない都市』5は圧巻です。
中華圏の作家では朱天文6が好きです。
彼女の作品で一番好きなのは『荒人手記』7ですね。

:朱天文の作品は必ず購入しますか。
:最近やっと彼女のすべての作品を揃えました。
彼女の作品は十数冊ありますが、『淡江記』8から読み始めています。
僕自身、彼女の作品に触れたのがかなり遅かったんですよね。

:いつごろから読み始めたのですか。
:2年前ぐらいからでしょうか。
『荒人手記』が再版された時に初めて手に取りました。
『巫言』9など、素晴らしい作品が多い作家です。

:では日本の書籍で好きな作品はありますか。
:あります! カメラマン杉本博司10の『苔のむすまで』11
杉本さんの作品を初めて知ったのはU2のアルバムジャケットでした。
初めてジャケットを見た時、これは一体何なのだろう?と
すぐに理解できなかったんです。
海を撮影した写真だとわかった時はすごい衝撃を受けました。
杉本さんは「海景Seascapes」シリーズ12を長期に渡って
撮影していますが、海そのものを撮っているわけではなく、
実は時間を表現しているんですよね。

:ストーンは2008年にエッセイ『私のロックママ』13を発表して、
作家としてデビューされたわけですが、なぜ本を書こうと思い立ったのでしょう?
:僕は今までの人生において、ずっと留まることなく
音楽や執筆などさまざまな創作活動を続けてきました。
今まで経験したことのない物事に向かい合った時、
僕にとってそれはすべてが初めての試みであり新しい創作です。
僕にとって子どもの誕生はものすごい衝撃でした。
僕はこれから全く新しい人生に踏み出すのだ、と強い衝撃を感じただけでなく、
妻の妊娠の過程を共に過ごしていく中で、
さまざまな体験をし、いろいろな思いが生まれました。
ですからこの体験を記録したい、記録しなくてはと思ったのです。
夫の立場から過去の自分を振り返って、新しい命の誕生を見届けたいと思いました。
今、実は2冊目の本を出版する準備をしています。
たぶん今年の半ばあたりに出版する予定です。
昨年僕はネット上でたくさんのエッセイを書きました。
それをまとめて出版する予定です。タイトルはまだ未定なので、
今はまだお知らせできないのですが。

(続きます!)

800_6828-xストーン(石頭)
本名、石錦航。台湾人気ロックバンド「Mayday」のギタリスト。1975年12月11日台湾、台北生まれ。国立台湾師範大学付属中学、淡江大学環境工学科卒業。コンサート中に当時交際中だった女性にプロポーズし、その後結婚。2007年に長男が誕生し、「小石頭(小さな石)」の愛称で知られている。2009年には、第二子が誕生している。

 

*4月15日スタートの佐藤健主演フジテレビ系ドラマ
『ビター・ブラッド』の主題歌“Do You Ever Shine?”をMaydayが担当。
Maydayオフィシャルサイト:http://www.mayday.jp

photo by 熊谷俊之/text by 西本有里

  1. 1935年上海生まれのSF小説家、脚本家。1957年より香港に移り住み、創作活動を続ける。香港の四大文学人と称されている。彼の作品はSF小説だけでなく、怪奇小説や武俠小説等多岐に渡る。有名なシリーズに「Wiselyシリーズ」「原振俠シリーズ」「女賊ムーランシリーズ」などがある。 []
  2. 武俠小説とは、中国文学の大衆小説の一ジャンルで、武術に長け、義理を重んじる人々を主人公とした小説の総称。金庸は武俠小説の第一人者で、中華圏ではその名を知らぬ者がいないといわれるほど、国民的な人気を誇り、日本での最初の紹介では「中国の吉川英治」と称された。豊かな教養に基づいて書かれた魅力溢れる物語は、一般大衆のみならず知識人にまで支持され、それまで低俗とされていた武俠小説を文学の域にまで引き上げた。代表作に『天龍八部』『秘曲 笑傲江湖』『射鵰英雄伝』『鹿鼎記』などがある。 []
  3. 倪匡の「Wiselyシリーズ」の1冊。2002年にアンドリュー・ラウ監督がアンディ・ラウ主演で映画化、邦題は「ブルー・エンカウンター」。主人公Wiselyは大学の同級生に青い血液を持つ人物がいることを発見する。彼の名は方天、なんと彼は土星から来た宇宙人だった。方天の乗った宇宙船が隕石に衝突し、地球に不時着したのだ。方天と共に宇宙船に乗っていたパートナーは日本の漁村に流れ着いていた。漁師達は彼を月から来た神だと誤解し、日本で「月神会」という巨大組織を結成する。方天のパートナーは飛行誘導機器を井上家に渡し、この機器を方天に届け、彼を土星に帰郷させたいと願い出る。しかし、この飛行誘導機器は月神会とソ連政府強奪の標的となるのだった。 []
  4. 1923年生まれのイタリアの小説家、SF作家、幻想文学作家、児童文学作家、評論家。20世紀イタリアの国民的作家とされ、多彩な作風で「文学の魔術師」と称された。1985年脳卒中のため死去。現在日本で読める作品に『木のぼり男爵』(白水Uブックス)、『見えない都市』(河出文庫)、『みどりの小鳥――イタリア民話選』(岩波少年文庫)などがある。 []
  5. ヴェネツィア生まれの商人の子マルコ・ポーロがフビライ汗の寵臣となって、さまざまな空想都市の奇妙で不思議な報告を行う。現代の巨大都市を思わせる連続都市、無形都市など、どこにもない国を描く幻想小説。河出文庫。 []
  6. 1956年、高雄鳳山生まれ。著名な小説家である外省人の父と、日本文学翻訳家である本省人の母を持ち、二人の妹も小説家という文学一家で育つ。中山女子高校時代に初めて小説を発表し、淡江大学英文学科在学中に三三書房を設立。「小畢的故事」を発表したことで映画監督侯孝賢と知り合い、彼の映画の脚本を手掛けるようになる。『童年往事』『冬冬の夏休み』『悲情城市』『珈琲時光』など、ほとんどの作品に脚本家として参加している。 []
  7. 第1回時報文学100万小説賞を獲得した作品。1994年に時報文化出版から初版が発行され、2011年には新聯典出版より再版された。日本では2006年に国書刊行会から『荒人手記 (新しい台湾の文学)』として刊行された。親友をエイズで亡くした40歳のゲイの男が、自分の半生を回想する形で綴られた小説。死んだ親友との、あるいはこれまでの恋人たちとの、あるいは家族との思い出を、時間も場所も自由に行き来させつつ語っている。日本で翻訳出版された作品には、筑摩書房より1992年に出版された朱天文の初の邦訳作品で、侯孝賢監督の映画『冬冬の夏休み』の原作小説となった『安安の夏休み』や、台湾を舞台にその中で生きる孤独な人々の姿を、独特の香り高い文体で描く短篇集で1997年に文科紀伊国屋書店より出版された『世紀末の華やぎ』、また、台北・京都、この二つの都市に刻まれた歴史と記憶をめぐる作品集で2000年に国書刊行会より出版された『古都』などがある。 []
  8. 淡江大学での生活や交友関係を書き綴ったエッセイ集。三三書房の立ち上げに関しても書かれている。 []
  9. 構想7年、実地調査を踏まえ、巫女をテーマに構成された宗教観漂う幻想長編小説。2008年に印刻文学より出版された。 []
  10. 1948年生まれ、東京都出身の写真家。東京およびニューヨークを活動の拠点としている。2009年高松宮記念世界文化賞など国内外で数々の賞を受賞、現代美術界を牽引する存在。作品は厳密なコンセプトと哲学に基づいて作られており、彼は写真をコンセプチャルアートの手段として捉え、その可能性を無限に広げたとされている。近年は伝統芸能の企画演出に加え、能舞台の設計など活動の場を広げている。 []
  11. “時間”の容赦ない力と、それに耐えて生き残る美とはいかなるものか、をテーマに、考古学から現代美術までを縦横無尽に読み解く、時空を超えた評論集。 []
  12. 人間の見ることのできる共通・普遍の風景を模索した結果、海の水平線へと至り、世界各地の海や湖で同じ風景を撮影してくるという『海景』のシリーズがスタート。「人類が最初に見た風景は海ではなかっただろうか」「海を最初に見た人間はどのように感じたか」「古代人の見た風景を現代人が同じように見ることは可能か」という問題提起を立て、大判カメラですべて水平線が中央にくるように撮影されたモノクロ写真のシリーズは、太古も現在も、そして未来においても変わらないであろうと思われる海景から感じる時間感覚を表現している。 []
  13. 原題『我的搖滾媽咪』。所属事務所相信音楽が出版した作家ストーンの処女作。奥様狗狗の出産前後に起きた出来事や第一子小石頭誕生の感動を記録したエッセイ。 []