interview_top_2

「牯嶺街少年殺人事件」で主演デビュー以来、
台湾では数少ない映画俳優として活躍している張震(チャン・チェン)。
故・楊徳昌(エドワード・ヤン)監督にその才能を見出され、15歳で銀幕デビューした彼は、
その後、李安(アン・リー)、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、
王家衛(ウォン・カーワイ)と名立たる監督に起用され、
俳優としてのキャリアを築いてきました。
そしてなんと2014年には監督デビューを果たしました!
そんな才気あふれる彼が、どのような本を読み育ってきたのか、詳しくお話を伺いました。

取材・構成=西本有里、写真提供=Cat(タイトル他)、許闖(プロフィール)

 

もっと台湾(以下、も):本を読むのは好きですか。
小さい頃はどんな本を読んでいましたか。

張震(以下、張):実は小さい頃は本を読むのは好きではありませんでした。
学校の勉強が非常に大変だったので、
読書は誰かから強制されてやることというイメージがあったせいかもしれません。

:それは勉強にほとんどの時間を取られてしまって、
本を読む時間がなかったということでしょうか。

:いえ、本を読みたいという気持ちが起こらなかったということです。
勉強だけで手いっぱいでした。だから小さい頃は漫画を読むのが好きでした。
よく読んでいたのは漫画雑誌『少年快報』1です。
でもその頃の『少年快報』は版権を取得していない雑誌だったんですよ(大笑い)。
たぶん昔の台湾の雑誌はきちんと版権を取ったりしていなかったと思います。
もちろん後々きちんと版権を取得するようになりましたが。

:張震が読んでいた当時の『少年快報』ってどんな内容の雑誌だったのですか。

:日本の『週刊少年ジャンプ』をレイアウトや内容はそのままに、
文字のみ中国語に翻訳して数週間から数か月遅れで出版していたように思えます。
昔、台湾は“山寨版“(パチもん)も結構ありましたよ。

:『ドラえもん』は日本の海賊版以外に、
台湾人の漫画家が描いた“台湾『ドラえもん』山寨版“2があった
と聞いたことがあります。

:本当ですか。小さい頃は、台湾人が描いたものなのか日本の翻訳本なのか
判別できなかったのでよくわかりませんが、
『ドラえもん』といえば、学校の近くにたくさんのレンタルショップがあって、
VHSビデオでアニメを見ることができました。
アニメもたぶん版権は取っていなかったでしょうね。
あの当時、台湾ではまだ「版権」という概念がなかった頃だと思うんです。
漫画は、雑誌だけでなく単行本も出版されていて、
単行本はきちんと版権を取得しているものもあったとは思うのですが。
僕は、単行本のほとんどを本のレンタルショップで借りていました。
というのは、子どもにとっては単行本はとても高かったですし、
台北だと、必ず中華商場3や光華商場4など
特定の場所に行かないと購入できなかったという事情があります。
今のようにコンビニや書店で好きな漫画が買えませんでしたからね。

:小さい頃は書籍よりも漫画を読むのが好きだったということですが、
その中で印象に残っている本はありますか。

:『アルセーヌ・ルパン』(亞森·羅賓)シリーズです。
『シャーロック・ホームズ』と対比的に語られますが、
僕の兄がルパンシリーズを好きでよく読んでいた影響もあって、
とても印象深い小説です。

:張震は推理ものが小さい頃から好きなんですね。
日本でも張震と同世代の子どもたちが
ホームズ、ルパン、それから江戸川乱歩といった冒険推理小説を
よく読んでいた時期と重なります。

:江戸川乱歩もよく知っています。
あと、台湾の漢聲出版社という出版社から出ていた
『漢聲百科事典』5と『漢聲中国童話』6
大判の12冊セット本は小学生の時に読んで非常に新鮮な印象を受けました。

『漢聲百科事典』は宇宙、未来、生態など毎回異なるテーマで特集を組んでいて、
百科事典のキャラクターがさまざまなイラストを使って解説してくれます。
『漢聲中国童話』も「十兄弟」7など有名な民話や伝説を集めた児童書です。
漫画では台湾の漫画で『諸葛四郎』8が大好きでした(笑)。
思い出しただけでも笑ってしまいます。
これは台湾の男の子なら誰でも知っている漫画です。
もし見つけたらぜひ読んでみてください、本当に面白いですから。
たぶん『少年快報』が出版される前は
みんな『諸葛四郎』を読んでいたんだと思います。
あと『老夫子』9ですね、香港の漫画ですけど。

:『老夫子』って子どもも読むんですね。

:はい、子どもも大好きですよ。
そして4コマ漫画の『烏龍院』10があります。
これらの漫画は連載ではなく、単行本で出版されていました。
どれも台湾ではとても人気のあった作品です。

(続きます!)

 

interview_prof張震(チャン・チェン)
1976年10月14日、台湾台北生まれの俳優。台湾の名優・張國柱(チャン・グォチュー)の次男。1991年に故・楊徳昌(エドワード・ヤン)監督の自伝的映画「牯嶺街少年殺人事件」でデビュー。最近の作品に王家衛(ウォン・カーワイ)監督の『グランド・マスター』(原題:一代宗師)、新作に侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『聶隱娘』がある。また第38回香港国際映画祭において3人の俳優がオムニバス形式で監督をした『三生』にて監督デビュー。

 

  1. 1989年に台湾の東立出版社が海賊版で出版していた漫画雑誌。一時期の発行部数は23万部と台湾の漫画史上で発行部数第1位を記録した。著作権法の改正により、海賊版は1994年6月12日をもって発売禁止となった。その後、東立出版社は講談社より正式にライセンスを受け、「新少年快報」を発行した。 []
  2. 台湾人漫画家劉明昆が出版社より依頼を受け1989年に描いた「台湾版ドラえもん」、キャラクター造形は日本のドラえもんとそっくりだが、ストーリーは台湾オリジナル。3冊の単行本が発売された。 []
  3. 現在の台北市中華路一段の辺りに位置していた大型ショッピングセンター。1961年にオープンし、都市再開発および地下鉄建設に伴って92年10月に撤去された。 []
  4. 1973年に古書や骨董品を扱う店を集めてオープンした商業センターで、当時は光華橋の高架下に位置していた。90年代からはパソコン関連の店や海賊版のCDやDVDを取り扱う店が増加。その後、再開発に伴い、2006年に取り壊されるが、2008年に新ビルが完成するまでの期間も仮設のプレハブで営業を継続していた。周辺地域はパソコン店などが集中して出店する電気街となっており、「台北の秋葉原」と呼ばれている。 []
  5. 英文漢聲出版社が1984年12月から85年11月まで出版した子供向けの12冊セットの百科事典。累積25万冊の販売量を誇り、台湾では最もよく売れた児童書。中国語名は『漢聲小百科』。 []
  6. 英文漢聲出版社が1982年12月から発売した子ども向けの12冊セットの童話集。昔から伝わる中国の有名な神話、民話、歴史、偉人伝などを集めている。中国語名は「漢聲中國童話」。 []
  7. 母親以外に見分けられる人がいない10人のそっくりな兄弟のお話。それぞれ特殊能力を持っている10人兄弟だが、一人一人の力では解決できない問題も、全員で力を合わせることによって解決できるというお話。 []
  8. 台湾の漫画家葉宏甲が1958年より週刊「漫畫大王」にて連載していた漫画。主人公の諸葛四郎と義兄弟の剣士真平が、架空の国“衛國”の平和を乱す悪人と戦う勧善懲悪ストーリー。1962年と78年に映画化、85年にテレビドラマ化された。 []
  9. 1962年より王家禧(ペンネーム:王澤)が香港の雑誌で発表した漫画。その人気は香港だけに留まらず、大陸、台湾、東南アジアにも広がった。中華圏においては日本の「サザエさん」のようなポジションにあり、内容は仙人の格好をした老人老夫子とその仲間たちが巻き起こすコメディータッチのものから政治・社会を風刺する内容のものなど、バラエティーに富んでいる。現在は長男の王澤が創作している。 []
  10. 台湾の漫画家敖幼祥が1980年より中国時報(台湾の新聞社)にて連載をスタートした4コマ漫画。宋朝の寺を舞台に二人の師匠と二人の弟子が繰り広げる物語を描いた。85年には講談社の『モーニング』でも連載されている。 []