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村上春樹さんの『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』で
読書の面白さを改めて発見した張震(チャン・チェン)。
彼が好きになった作家には、やはり“映画”が深く関わっていました。
お気に入りの作家にまつわるエピソードを伺いました。

取材・構成=西本有里、写真提供=Cat(タイトル他)、許闖(プロフィール)

 

もっと台湾(以下、も):村上春樹さん以外に好きな作家の方はいますか。

張震(以下、張):僕がいちばん好きな作家は芥川龍之介です。
『羅生門』は衝撃的でした。

:台湾では、黒澤明監督の撮った「羅生門」の物語が
芥川龍之介の『羅生門』として理解されているようですが、
黒澤明監督の「羅生門」は芥川龍之介の『藪の中』を原作としています。
衝撃を受けたのは『薮の中』のことでしょうか。

:そうです、『薮の中』です。
でも芥川龍之介の『羅生門』も読んでいますよ。
約100年も昔の作家がこのようなテーマで小説を書いていたことにハッとしました。
台湾では芥川龍之介の作品がそうたくさん出ているわけではないのですが、
僕は彼の短編作品集を購入して読みました。
翻訳の関係もあるのでしょうが、
僕は日本の作家の作品を読むのがとても好きなのです。
松本清張や横山秀夫など日本の探偵小説も好きでよく読みます。
松本清張は特に好きな作家です。
彼の小説はシンプルですが、登場人物一人一人の情感が深く描かれています。
彼が描いた昭和は非常に魅力的で、哀愁を感じるというか、すごく惹かれます。
また藤沢周平や池波正太郎も好きです。

:藤沢周平や池波正太郎もお好きなんですか!
時代小説や歴史小説も読まれているとは驚きました。
好きな作家の幅がとても広いですね。

:はい、僕はいろいろなジャンルに手を出す雑食系なんです。
もちろんこれは仕事と関係しています。
実は藤沢周平さんの小説は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督から
読めと言われたんですよ。確か『隠し剣秋風抄』を薦められたと記憶しています。
この作品は短編で、一つ一つのストーリーが技の名前になっています。
キャラクターの性格を基にそれぞれの必殺技を描いているので、
俳優に読ませるにはとても適していると思いますし、
自分自身も人物をクローズアップして描いているところに惹かれました。

池波正太郎さんの作品も素晴らしいです。
僕はキャラクターを基軸として展開される本格派ミステリーが好きで、
剣の達人を主人公とした『剣客商売』シリーズはとても面白かったですね。
遭遇する事件だけでなく、主人公と息子の関係なども描かれており、
江戸時代の情景などイメージがふくらむ小説です。

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映画の中でその人物がいかに相手と対峙〔たいじ〕するか、
どのような技を使って戦うかというのは、
その人物のキャラクターと深く関連しています。
ですから演じる人物の行動や技を
そのキャラクターの性格を軸に展開することは非常に重要で、
役者としてもこれらの小説から学べるところがたくさんあります。

:先ほど日本の作家が好きな理由に「翻訳の関係もある」とおっしゃっていましたが、
翻訳本を読んでいて文体に違和感を感じたりすることはないですか。

:日本の小説で違和感を感じることはほとんどないですね。
村上春樹さんの作品はほとんど賴明珠1さんが翻訳されているので、
彼女の翻訳の文体に慣れているということもあるのかもしれませんが、
違和感を感じることはありません。
ただ西洋文学の翻訳本ですと、いかにも翻訳しましたというタイプのものもあり、
違和感を感じることはあります。何かが足りないというか……。
もともと言語ロジックが違いますから仕方ないのかもしれません。

(続きます!)

 

interview_prof張震(チャン・チェン)
1976年10月14日、台湾台北生まれの俳優。台湾の名優・張國柱(チャン・グォチュー)の次男。1991年に故・楊徳昌(エドワード・ヤン)監督の自伝的映画「牯嶺街少年殺人事件」でデビュー。最近の作品に王家衛(ウォン・カーワイ)監督の『グランド・マスター』(原題:一代宗師)、新作に侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『聶隱娘』がある。また第38回香港国際映画祭において3人の俳優がオムニバス形式で監督をした『三生』にて監督デビュー。

 

  1. 1947年生まれの台湾苗栗県出身の翻訳家。村上春樹作品の翻訳家として知られる。彼女による初めての翻訳は92年に時報出版より出版された『1973年のピンボール』。 []