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『母とミシンの六十年――洋裁がかなえた台湾少女の夢』
原題:母親的六十年洋裁歳月(「母の60年の洋裁人生」の意)
著者:鄭鴻生(てい こうせい/ジェン・ホンシェン)
出版社:印刻文学生活雑誌出版
仕様:255ページ、縦組み、2色カラー。2010年3月初版刊行。
カテゴリー:ノンフィクション、伝記

読みどころ
 台湾女性はどうやって自分の人生を歩んできたのか。
 昭和に変わったばかりの台湾で、日本の婦人雑誌が一人の台湾人少女に見せた夢——洋裁。新時代の女性として自活するため身につけた技術が、少女を日本へ向かわせ、戦後は洋裁の先生として、台湾人女性の社会進出を後押しする人生を送らせた。本書は60年の人生を洋裁とともに歩んできた一人の女性(著者の母)を、丁寧な調査と平明な文体で描いた歴史ノンフィクションである。
 台湾の古都・台南の伝統的な大家族に生まれた少女は、“台南銀座”にあった日本人経営の洋装店に見習いとして働き始め、日本留学を経て、洋裁師として独立した。戦後は洋裁学校を経営し、手に職をつけて自立しようとする多くの女性を40年余り見守った。そして既製服を思うままに買える豊かな時代となり、洋裁学校は歴史的役割を終え、彼女の洋裁人生も幕を閉じた。
 本書は、平凡な一人の台湾人女性を通じて、日本統治時代の台湾(台南)や東京の生活を描き、また洋裁という切り口から、戦前から戦後にかけての台湾の経済状況、女性の職業意識、そしてファッションの変遷を語っている。収録された多くの写真からもそれがよくわかる。
 これまで戦後民主運動における自身の体験を描いてきた著者が、初めて母と戦前の台湾を描いたオーラルヒストリーの佳作(2011年、台北国際ブックフェア賞 ノンフィクション部門)。著者は次作『尋找大範男孩』でさらにこのテーマを掘り下げ、清の時代の男たち(祖父世代)と日本時代の男たち(父世代)を描くことになる。

目次

   
スタイルと品格
流行の変遷、時代の変化と女性

1 目覚めのころ(1931-36年)
いとこの結婚式で初めて見たウエディングドレス
洋服の魅力
古い港町の大家族 
日本の婦人雑誌が開いた新しい扉
日吉屋洋装店というきっかけ——洋裁店見習いになる
洋裁という新しい光

2 学びのころ(1936-44年)  
見習いの日々
もっと上を目指したい——日本留学 部分訳を読む→
戦時下のウエディングドレス

3 戦争と戦後の混乱を生き抜く(1944-53年)
空襲と疫病
中華民国復帰後の混乱
嵐の中の静かな日々

4 独立のころ(1953年)
開校
自分の場所を探して
近代的な大通りを一歩入れば古い町並み
故郷に腰を落ち着けて

5 夢中で仕事(1953-60年)
オーダーメイドの時代
台湾女性の生きる道
あっという間に軌道に乗り
変わり始めた古い町並み

6 もっとモダンに(1960-74年)
農村の少女が次から次へと
洋裁学校の黄金時代
時代の変化と女性の意識

7 最盛期を過ぎて(1974-94年)
経済成長がもたらした変化
歴史的役割を終えた洋裁
手を動かす仕事は儲からない
美しいピリオドの準備

あとがき 最後のおめかし
参考文献

○本書の日本語版は、来年刊行予定です。タイトルや訳文は刊行時に変更される予定です。

selection#12PH-2著者:鄭鴻生(てい こうせい/ジェン・ホンシェン)
1951年、台湾台南市生まれ。国立台湾大学哲学部卒業。在学中「保釣運動(尖閣島が中華民国の領土であると主張する運動)」、大学民主運動に参加。緑島での兵役ののち、アメリカでコンピューター工学を学び、修士号を取得。88年帰国し、政府情報工学研究機関でネットワーク構築に携わる。96年、妻とともにシドニーに1年滞在。現在作家兼主夫。主な著書に、『青春之歌』(2001年、聯合報「読書人」年間最優秀賞。邦訳『台湾68年世代、戒厳令下の青春――釣魚台運動から学園闘争、台湾民主化の原点へ』丸川哲史訳、作品社、2014年)、『荒島遺事(孤島の物語――左翼青年が緑島で過ごした日々)』(2005年)、『尋找大範男孩(台湾男児はいずこへ?――沈黙する戦前世代)』(2012年)がある。

著書一覧→(博客来)
邦訳『台湾68年世代、戒厳令下の青春――釣魚台運動から学園闘争、台湾民主化の原点へ』の紹介(ふぉるもさん・ぷろむなあど)

部分訳を読む→
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