所変われば本違う。
台湾で出版されている本たちは、日本の本たちと、いろんなところがいろんなふうに違うもの。
いったい、どこがどういうふうに違うのか、台湾人が見る違いを一つ一つご紹介していきます。
次に台湾へ行ったら、ぜひ書店を歩いてみてください。

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帯と推薦文

文=黄碧君

帯に詰め込む!

台湾本も日本本も、帯が付いていることがほとんどです。
帯というのは、通常は宣伝のためのキャッチフレーズを載せたり、
本のコンセプトなどの文面をピックアップしたり、
読者の目を引きつける役割だと考えられます。

日本の場合は、しばしば有名の作家や著名人のオススメの一言が載っています。
そして「○○大賞」などの各文学賞の受賞歴や、
売れ筋であることを表す「○○万部突破!」のことばも見られます。

さて、台湾本ならどうでしょう。基本的には日本と同じように、
少しでも多くの読者の目を止めるよう、情報をいっぱい詰め込みます。
この点についてはどこの国も同じかもしれません。

台湾本で、特に大きな違いを挙げるとしたら、
特別対談や特別解説が本文以外のおまけとして収録されていることや、
あるいは宣伝期間中に行われる講演やトークイベントなどの情報を、よく帯に載せます。

些細な違いではありますが、推薦者が一人だけではなく、
各分野の有名人がリストになっている本も少なくありません。
まるで、推薦する人が多ければ多いほど本の価値が高まる、とばかりに、
まるで、クレジットを稼いでいるかのように、たくさんの名前を載せるのです。
こんなふうにたくさんの作家の名前を載せるのは、
それぞれの作家のファンに向けて、少しでも本のことを知らせたいという
意図があるのだと推測することができます。

台湾本の帯のデザインや形も、さまざまです。

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サイズにはカバーの半分位の大きいものや幅の小さいものもありますし、
素材もいろいろで、普通の紙ではなく、
プラスチックっぽい透明感ある帯をを使っていることがあります。
斜めに折ってあるものがあるなあと手に取ってみたら、開くとカバーほどのサイズになり、
中には絵や図が入っていたりして、ちょっとした趣向が凝らされていました。
こういう帯はカバーと合体しているものと見ていいでしょう。
最近はごくまれに縦の帯も見ます。
こんなふうに、実にバラエティーに富んでいるのです。

台湾本には推薦文がある。

台湾本の特徴をもう一つ挙げるなら、推薦文が多い、という点でしょう。
実用書やノンフィクションだけではなく、エッセイや小説まで、
本の冒頭に数行ないし数ページの推薦文がある比率が高いです。
序文の代わりに、推薦序になることもあります。
もちろん推薦文と序文を並列するのもよくあります。

推薦文を書く人は、たいていが作者と同じ分野で活躍するプロや先輩、名声の高い方です。
内容としては、本の特徴や背景、優れているところ、
著者の文体やスタイル、意図や狙いを述べたり、
時にはネタがバレない程度の解説まで及ぶことまで書かれていることも。
要するに、推薦文には本文では触れることのできない著者に関する情報と
作品の予備知識をうまく組み込んで、本の魅力を伝える、これが一番理想的です。
(一昔前の「導讀」としての役割が、現在の推薦文に変わってきました)

ちなみに、日本の文庫本では巻末に解説を収録していますが、
日本の単行本には推薦文も解説文もほぼないのではないでしょうか。
台湾には文庫本がありませんので、「指點迷津」(謎解きや解読)要素が強い解説は、
特別なジャンル(海外ミステリーなど)や再版の場合(古典など)に限るでしょう。

台湾本の推薦文は、読者が本を買うかどうか決める際の
判断材料の一つといってもいいでしょう。
もちろん推薦文を飛ばし、本文の冒頭を読んでから買う人も少なくありません。
作者以外の目線や切り口などがあれば、
作品や作者が置かれた背景知識を提供するだけでなく、
より本文の理解を深めて、楽しめる総合的な材料になると思います。

推薦文は、読者にとってお得感があるように思います。
本文以外に、違う見方や共感できる文章を読むことで、
読み終わったあともう一度繰り返すと、作品の余韻を味わうことができます。

台湾では、日本のような書評メディアや文芸誌が少ない分、
このようなやり方が定着していったのではないでしょうか。

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黄碧君(ふぁん・びじゅん)
ellie1973年生まれ、台湾人女性。書籍翻訳・通訳家。大学卒業まで台北で暮らした後、日本の東北大学に留学、その後はアメリカ語学留学、結婚を経て、現在は日本人夫と台北で暮らす。台北で書店や版権仲介会社の勤務経験をもつ。全国通訳案内士、沖縄地域通訳案内士の資格を取得。2012年、日本人に台湾本の多様性と魅力を伝えるべく、台湾書籍を提案・翻訳・権利仲介する聞文堂LLC合同会社を設立。本は生涯の最良養分と信じて、台湾本のコーディネートと日本全国を旅するライターを目指す。
【主な翻訳作品】
辻仁成・江國香織『恋するために生まれた』幻冬舎、(中文題『在愛與戀之間』皇冠出版社)
寺山修司『幻想図書館』河出書房新社(中文題『幻想圖書館』邊城出版社)
奈良美智『ちいさな星通信』ロッキング・オン(中文題『小星星通信』大塊出版社)
青木由香『奇怪ねー台湾 不思議の国のゆるライフ』東洋出版(中文題『奇怪ね』布克文化出版社)
杉浦さやか『週末ジャパンツアー』ワニブックス(中文題『週末日本小旅行』時報出版社)
荻原浩『あの日にドライブ』光文社(中文題『那一天的選擇』商周出版社)
島田雅彦『エトロフの恋』新潮社(中文題『擇捉島之戀』台灣商務出版社)
三浦しをん『舟を編む』光文社(中文題『啟航吧!編舟計畫』新經典出版社)
松浦弥太郎作・若木信吾写真『居ごこちのよい旅』筑摩書房(中文題『自在的旅行』一起來出版社)
角田光代『あしたアルプスを歩こう』講談社文庫(中文題『明天散步阿爾卑斯』(仮)日出出版社)など。