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文=赤松美和子

一国家一言語一文学という近代文学の常識を鮮やかに覆し、
漢文、中国語、日本語、台湾語など多様な言語からなる台湾文学。
この多元性、ハイブリッド性こそが台湾文学のいちばんの特徴です。
今月は台湾文学が作られる夏の風物詩、文学キャンプをご紹介しています。

#6 台湾文学は夏に作られる 前編はこちら→
#1 台湾文学史 清朝〜日本統治時代はこちら→
#2 台湾文学史 終戦〜70年代まではこちら→
#3 台湾文学史 80年代〜2000年代まではこちら→
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2つの文学キャンプ

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まず全国巡廻文学キャンプは、文芸雑誌『聯合文学』と聯経出版社などが中心に行っているキャンプです。1985年に始まり、今年で30回を迎えました。1990年には1,234人の参加者を集めた参加者数が最も多い文学キャンプです1。今年は、7月4日〜6日の2泊3日、国立宜蘭大学で行われました。参加費は、研修費、食費、宿泊費、保険などすべて込みで3,600元。コースは、小説、散文、詩、メディア、映画、劇、児童文学、大衆文学の8コースです。講義する講師もほぼ作家ですが、各コースには、参加者と2泊3日寝食を共にする担任講師がいます。たとえば、一番の人気コースである小説コースの今年の担任講師は二人、その一人は李昂、もう一人は原発問題を小説化し、台湾で話題騒然となった小説『零地點 GroundZero』(2013)の作者、伊格言です。

おもしろそうだけど、もう終わってるじゃん!と残念に思ったあなたに朗報。まだ間に合う文学キャンプもご紹介しましょう。全国台湾文学キャンプ(申込締切は7月31日)は、文芸雑誌『INK 印刻文学生活誌』と国立台湾文学館が中心となり開催しています。国立台湾文学館開館の翌年2004年から始まった比較的新しい文学キャンプです。

今年は、8月5日〜7日の2泊3日、国立台湾師範大学を会場として行われ、参加費は、食費、宿舎代、保険費、研修費込の2,800元。コースは、小説、散文、詩、劇、映像、文芸創作の6コースあります。文芸創作コースは、今年新しく創設されたコースです。全国台湾文学キャンプ創作奨では、小説、散文、詩の持込原稿を募集しており、優秀作品には賞金が送られ、作品は『INK 印刻文学生活誌』に掲載してもらえるそうです。新しい作家誕生の瞬間です。

かつての文学キャンプは、文学キャンプ中に創作の時間が設けられていました。しかし2泊3日となってからは、持込原稿を対象とした文芸創作賞が一般化しました。昨今、持込原稿すら受け付けない、完全に読者感謝祭イベント化した文学キャンプも現れる中、全国台湾文学キャンプが、新しく文芸創作コースを設けたことは、文芸創作こそが文学キャンプのアイデンティティであるという全国台湾文学キャンプの意志表明なのかもしれません。

さあ、あなたもぜひ文学キャンプへ! 台湾文学の熱さを感じてみてください。

(次回は来月お届けの予定です)

10250674_794106527269313_1092258525_n赤松美和子(あかまつみわこ)
大妻女子大学比較文化学部准教授。
博士(人文科学)。1977年、兵庫県生まれ。
2008年、お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。専門は台湾文学。
著書に『台湾文学と文学キャンプ―読者と作家のインタラクティブな創造空間』(東方書店)がある。

  1. 台北と台中での2回開催の合計参加者数。2005年5月23日、1990年開催の総責任者で、『INK 印刻文学生活誌』初代編集長であり、元『聯合文学』編集長の初安民氏に筆者がインタビューした際に答えた数字。 []