interview_top_4B
大学時代、運命の1冊に出合った温昇豪。
台湾人作家朱少麟以外にどんな作家の作品が好きなのか、
さらに詳しくお話を伺いました。

取材・構成=西本有里、撮影=熊谷俊之

 

もっと台湾(以下、も):朱少麟さん以外に好きな作家の方はいますか。
溫昇豪(以下、溫):村上春樹さんです(笑)。
村上さんの本は朱少麟の『傷心咖啡店之歌』と似通った所があります。
幻想的かつリアルな物語。
実生活に即した細やかな描写がある一方、
物語のバックグラウンドには現実離れした雰囲気が漂います。
彼らの美しい文体も好きです。もしかすると文学性という点からいえば、
高い評価を受けているとはいえないかもしれませんし、
重苦しい考えを美しい文章で綴っているに過ぎないという人もいます。
でも僕は彼らの作品を読むことをとても楽しんでいます。
それで十分じゃないですか。

:村上春樹さんの作品でいちばん好きな本はどれですか。
:『ノルウェイの森』と『国境の南、太陽の西』です。
この2冊も何度も読み返しました。
僕は歳を重ねるにつれて、新しい書籍を開くことがどんどん少なくなってきています。
以前読んだ本を読み返すことで、本を再度体感するというか……
初めて読んだ時と再読した時とで、
自分の考え方や感じ方がどう変わったかを感じるのを楽しんでいます。
自身の変化を楽しむ、とでもいうのでしょうか。

800_0642

:新しい本を読むことは少なくなっているということでしたが、
全く新しい本を読まないわけではないですよね?
最近読んだ本で印象に残っているものはありますか。
:最近はエッセイを読むことが多いです。特に家族に関するエッセイ。
呉念真(ウー・ニェンジェン)監督1が書いた
『這些人、那些事(これらの人、あれらのこと)』2
小野(シャオイエ)さん3が時報出版から出版したエッセイシリーズ、
そして王健壯(ワン・ジェンジヨァン)さん4がお父様のことを描いた
『我叫他,爺爺(僕は彼をお爺ちゃんと呼んだ)』5などです。
これも僕が年を取ってきた証拠なんでしょうね。僕の両親もどんどん歳を重ねていますし……。
あ、龍應台(ロン・インタイ)さん6の『目送』7も読みました。

:龍應台さんの作品も読まれているのですね。
実はもっと台湾の社長は龍應台さんの書籍を翻訳しています。
『目送』も日本で発売する予定です。
:そうなんですか!
もちろん『台湾海峡一九四九(原題:大江大海一九四九)』8も読みましたよ。

実は僕はこの本を両親の机の上にそっとおいたのです。
本って親子のコミュニケーションの一端になったりしますよね?
特に言葉で何かを伝える必要はないのです。人はそれぞれ置かれている環境は違いますが、
お互いに共通して持っている情感がありますから。
両親はどうやら僕が置いた本をちゃんと読んでくれているようで、
特に何も言わなくても僕が考えていることを理解しているようです。

(続きます!)

 
800_0623
温昇豪(ウェン・シェンハオ)
1978年2月22日、台湾高雄市出身の俳優兼モデル。
2006年に公共テレビで放送された『危險心靈(危険な魂)』で演じた数学教師役で注目をされ、その後『敗犬女王-My Queen(原題:敗犬女王)』『P.S.男(原題:偷心大聖PS男)』などアイドルドラマに多数出演。2010年に出演した大ヒットドラマ『結婚って、幸せですか(原題:犀利人妻)』以降、『ズーム・ハンティング(原題:獵豔)』『候鳥來的季節(渡り鳥の季節)』『結婚って、幸せですか THE MOVIE(原題:犀利人妻最終回:幸福男·不難)』など映画作品への出演も多数。2013年には歌手デビューを果たし、EP『James Wen』を発売した。

  1. 1952年台北県生まれの監督、作家、脚本家、俳優兼司会者。監督作品に『多桑』や『太平・天国』がある。また脚本作品は数多く、侯孝賢監督の『恋恋風塵』『悲情城市』や『戯夢人生』、また曾壯祥監督の『殺夫』などがある。 []
  2. 2010年に圓神出版社より出版されたエッセイ集。家族や友人たちとの関係を呉念真自身が語り部となり、切々と語る感動作。 []
  3. 1951年台北市生まれの作家兼脚本家。1973年より執筆活動を開始し、今までに数多くの小説やエッセイを発表する。『蛹之生』にて第2回聯合報文學賞大賞を受賞。また楊德昌(エドワード・ヤン)監督と共同執筆した『恐怖份子』はアジア太平洋映画祭にて最優秀脚本賞を受賞している。 []
  4. 1952年高雄生まれの記者、作家兼政治評論家。台湾四大新聞社の一つである中国時報の編集長と社長を務めた時期もあった。 []
  5. 2011年12月に九歌出版社より出版された作者の父について綴ったエッセイ集。 []
  6. 1952年高雄県生まれの作家であり現中華民国文化部部長。著名作に『野火集』『請用文明來説服我(文明で私を説得して頂戴)』や『台湾海峡一九四九(原題:大江大海一九四九)』がある。 []
  7. 2008年7月に時報出版より出版された作者の家族について綴ったエッセイ集。 []
  8. 台湾では2009年8月に天下雑誌より発売された1949年の国共内戦前後の関係史を文学的に描いた歴史ノンフィクション。日本では2012年6月に白水社より『台湾海峡一九四九』http://www.amazon.co.jp/dp/4560082162/として発売された。 []