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『日本統治時代の台湾――写真とエピソードで綴る1895-1945』の翻訳作業中、
参考にした本を紹介します。
本書を通じて日本統治時代の台湾に興味を持たれた方が、
次に読む本を見つける際の一助になればうれしいです。

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文:天野健太郎


日本統治時代を知る基礎資料となる、当時最大の日刊紙『台湾日日新報』は、国立国会図書館や東京大学明治新聞雑誌文庫、日台交流センター(六本木)などにマイクロフィルムで収蔵されています。当時台湾に暮らしていた日本人と台湾人が毎日目にしていたニュース記事や読み物、広告、写真を楽しむことができます。日本語記事は当然、旧かな・旧字です。

『台湾日日新報』を読むのに最も簡便なのは目黒区立八雲中央図書館で(東急東横線都立大学駅が最寄り。台湾日日新報社社長・守屋善兵衛とゆかりがあるそう)、影印本が開架されていますので、気軽に当時の台湾の雰囲気を感じることができます。ただし印刷不明瞭で読めない時期が多くあります。インターネットなら、神戸大学付属図書館デジタルアーカイブ新聞記事文庫で、一部の記事がスキャン、活字化されています。


国立国会図書館のサイト「近代デジタルライブラリー」には、日本統治時代台湾の日本語資料がたくさん所蔵され、PC上で閲覧できます。
たとえばトップページから「台湾写真帖」(1908年、本書第8節 閑院宮載仁親王訪台の年)、「台湾鉄道旅行案内」(1927年、本書第17節 台湾八景の年)を検索すれば、そのスキャン画像を全ページ読むことが可能です。
『コレクション・モダン都市文化〈第84巻〉台湾のモダニズム』和田博文監修(ゆまに書房)は、「台湾勧業共進会案内」(1916年、本書第2節 マラソン大会の年)などが復刻収録されています。いずれも当時の日本人が台湾を旅する際に読んだ、素敵なガイドブックです。写真も多いので、ぜひ開いてみてください。


日本統治時代の台湾の歴史を知る、日本語の入門書としてはまず、『台湾』伊藤潔(中公新書)が最適です。台湾総督府の統治やそれに対する台湾人の抗日運動がコンパクトにまとめられています。日本統治時代にフォーカスした新書には、『風刺漫画で読み解く 日本統治下の台湾』坂野徳隆(平凡社新書)、『台湾に生きている「日本」』片倉佳史(祥伝社新書)があります。前者は台湾日日新報の風刺漫画を題材とし、後者は日本統治時代の建築物や台湾の日常語に溶け込んだ日本語について調査され、いずれも労作です。

片倉佳史さんについては、交流協会の雑誌『交流』で連載されている「台北の歴史を歩く」も、当時の台北の地理、建築を理解する際の参考にしました。また、『日本鉄道旅行地図帳 歴史編成 朝鮮・台湾』(新潮社)で、当時の地名のフリガナを確認しました。

その他、通史としては、『台湾史小事典』呉密察(中国書店)(私が使っているのは遠流出版の中国語版)、『台湾の歴史—日台交渉の三百年』殷允芃(藤原書店)、『増補版 図説 台湾の歴史』周婉窈(平凡社)、『台湾』戴国輝(岩波新書)、『台湾』王育徳(弘文堂)があります。個人的には、藤原書店版が描く、清の時代の荒ぶる台湾が突出しておもしろいと思いました。(コラム「台湾史を知るためのブックガイド」を読む

さらに台湾文学史なら『講座 台湾文学』山口守編(国書刊行会)と『台湾新文学運動の展開』河原功(研文出版)、政治史なら『日本統治下の台湾』許世楷(東京大学出版会)、『台湾抗日運動史研究(増補版)』若林正丈(研文出版)、『台湾総督府』黄昭堂(教育社歴史新書)がそれぞれ表裏から当時の社会情勢を描いています。

分野史としては、『台湾を描いた画家たち─日本統治時代 画人列伝』森美根子(産経新聞出版)、『はじめに映画があった―植民地台湾と日本』田村志津枝(中央公論新社)、『東アジア流行歌アワー』貴志俊彦(岩波書店)、『明治の冒険科学者たち』柳本通彦(新潮社)、『台湾鉄路と日本人』片倉佳史(交通新聞社新書)、『台湾 近い昔の旅 台北編―植民地時代をガイドする』又吉盛清(凱風社)、『ニセチャイナ-中国傀儡政権』広中一成(社会評論社)などがあります。

どれも専門書で、また絶版も多いですが、「台北市電計画は林献堂が潰した」とか、「『風と共に去りぬ』が戦前台中で上映されていた」とか、本書にないおもしろエピソードがあったりするので、拾い読みしてみると意外な発見があるかもしれません。本書にもあるとおり、台湾の近代絵画は日本との関係がとりわけ深く、近年、日本でもテーマ展・個展が開催されています。機会があれば、活字や写真で伝えるのとは異なる、当時の台湾人画家が描いた台湾を鑑賞してみましょう。


台湾の書籍(中国語)では『台北老街』莊永明(時報出版)、『台灣新文學史』陳芳明(聯經出版)、『圖說台灣地名的故事』蔡培慧、陳怡慧、陸傳傑(遠足文化)、『展示臺灣』呂紹理(麥田出版)、『台灣藝妲風華』邱旭伶(玉山社)、『臺北小散步』水瓶子(流行風)、『台灣百年人物誌』財團法人公共電視文化事業基金會(玉山社)などを参考にしました。(陳芳明先生については、本サイトでまたご紹介したいと思います。)

また、日本統治時代の絵葉書を多数、カラーで収録した『臺灣風景明信片 全島巻』上・下、張良澤(國立台灣圖書館)と、当時の建築や都市をイラストで詳細に描いた『圖說日治台北城』徐逸鴻(貓頭鷹)は、中国語がわからない方でもビジュアルで楽しめるのでおすすめです。最近刊行された雑誌『攝影之聲 Voice of photography』2014年第12期「太陽旗下的凝視—日本時代台灣寫真帖特輯」も、要チェックです。

近年は本書の著者・陳柔縉以外にも、日本統治時代を題材とした本が多く刊行されています。中国語がわかる方はぜひ書店で探してみてください。


日本統治時代の台湾を描いた日本語の小説もたくさんあります。当時の台湾人作家の多くは日本語で作品を残したのです。(コラム「ハイブリッド台湾文学」を読む

入手しやすいアンソロジーとしては『コレクション戦争×文学 第18巻 帝国日本と台湾・南方』佐藤春夫(集英社)、『〈外地〉の日本語文学選1 南方・南洋/台湾』黒川創編(新宿書房)があり、台湾人作家や台湾に渡った日本人作家が描いた“内面”を読むことができます。

あるいは星新一『人民は弱し 官吏は強し』(新潮文庫)から入るのも、いいきっかけかもしれません。星新一の父、星製薬社長・星一が後藤新平の口利きで台湾のモルヒネ利権を得て、のちに台湾総督府の妨害で失うまでが描かれており、日本統治時代・台湾での日本人社会が垣間見れます。

一方、邱永漢の小説作品には、日本統治時代末期と戦後を生きる日本語世代の台湾人の姿が切り取られています。たとえば「客死」(『邱永漢短編小説傑作選 見えない国境線』(新潮社)所収)のモデルは戦後東京に亡命した林献堂です。

最後に、台湾・新竹で生まれた埴谷雄高の短編小説「虚空」(『虚空』(現代思潮社)所収)は、めちゃくちゃかっこいい小説です。日本統治時代を直接描いているわけではありませんが、彼の台湾経験を窺い知ることができます。

以上、まったく体系的ではありませんし、重要な書籍が多く漏れているとは思いますが、このリストが、日本統治時代の台湾を理解する、何かのきっかけになれば幸いです。