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台湾職人の底力       文=天野健太郎

@taiwan_about (もっと台湾)」というアカウントでツイッターをしている。昔は、日本ではなかなか紹介されない台湾のニュース、暮らし、歴史、文化などをバラエティにツイートしていたが、最近は手抜きで、気が向いたときにニッチな話題だけを垂れ流している。台湾の出版・書籍などはニッチの最たるもので、中国語という障害があるから、台湾メシの話題に比べれば注目度は100分の1程度だろう。それでも、少しでも台湾の本について知ってもらえるよう、宣伝・紹介を続けている。

幸い、最近の台湾の本は、中国語がわからなくても楽しい本が多い。読書習慣と印刷コストの違いだろうが、全ページカラーの写真、イラストで訴える本がとにかく目立つ。最近も歴史もの、建築関連、あるいは写真集などを紹介したが、そのうち驚くほど大きな反響があったのがこの本――『職人誌』黄靖懿、嚴芷婕著(遠流出版、2013年)である。

写真とイラストたっぷりに台湾各地の職人を紹介する本書は、台湾の大手紙、中国時報の「2013年開巻好書(今年の10冊)」非文学部門にも選ばれた。遠流出版が展開するTaiwan Styleシリーズは食や旧暦、あるいは鉄道・自転車の旅など台湾独自の文化、風土を飾らない切り口で伝える良質な叢書であるが、本書はとりわけ素晴らしい。

紹介される職人は52人に上る。切り絵、凧、珊瑚彫刻などの工芸品は勿論、木桶、イグサ帽、竹細工といった日用品、そして門神や銀飾り帽を始めとする神具まで、内容は実にバラエティに富んでいる(畳や漆など、起源を日本統治時代にするものも多い)。また、チャイナドレスや刺繍くつ、香り袋など日本人女子観光客にオススメの職人も登場する(ショップ情報もあります。台南「合成帆布」は、古本屋の帰りに寄りました)。おもしろいのはこの本からは「懐古趣味」、あるいは「たそがれ感」みたいなものが感じられず、どの職人も若々しく、柔軟に自らの職人芸を現代社会に対応させ、新しい商品・作品を生み出していることだ。

本書の著者もまた若い(デザイン系大学を卒業したばかり)。職人たちの仕事場は、細密かつ広がりをもって描かれ、糸目糊置で残したような白い輪郭線は、切り取る色よりも鮮やかな印象を残す。実直な職人芸に、かすかな変則が見え隠れする。

この本の紹介ツイートは、リツイート・お気に入りの数が100を超えた。パイナップルケーキの超人気店「微熱山丘」の日本進出ニュースが200弱であったことを考えると、当然、日本での翻訳出版を検討すべきと考えるのである。

※本文は『な~るほどザ台湾』2014年4月号掲載を加筆・修正したものです。

 
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天野健太郎(あまの けんたろう)
1971年、愛知県生まれ三河人。京都府立大学文学部国中文専攻卒業。2000年より国立台湾師範大学国語中心、国立北京語言大学人文学院へ留学。帰国後は中国語翻訳、会議通訳者。聞文堂LLC代表(ツイッターアカウント「 @taiwan_about 」)。台湾書籍を日本語で紹介するサイト「もっと台湾(http://www.motto-taiwan.com )」主宰。訳書に『台湾海峡一九四九』龍應台著(白水社)、『交換日記』張妙如、徐玫怡著(東洋出版)、『猫楽園』 猫夫人著(イースト・プレス)。『日本統治時代の台湾』陳柔縉著(PHP研究所)。俳人。