日治台北城 書影2

 

読みどころ

 

中国語で「城」といえば、城壁に囲まれた市街地を指すことが多い。書名の「台北城」は1884年に完成した街で、現在の台北市の一部に当たる(中華路、愛国西路、中山南路、忠孝西路に囲まれた地域)。
「台北城」では1895年に日本軍が進駐したあと、日本による統治がはじまる。その後、日本の手によって道路や水道といったインフラが整備され、鉄道が通って駅ができ、学校、神社、病院、映画館といった市井の人々の生活に密接した建築物が登場する。本書はこれらを完成の年代順に、150点以上のイラストと文章で紹介している。
その際、現在との比較がないことが本書の特徴ともいえる。普通、過去の建築物を紹介する本というと、多くが現在と過去を対比することでノスタルジックな情感を高めようとするが、本書では一切それが見られない。
これは本書が現存する建物の履歴を探るものではなく、あくまでも時代の経過とともに日本統治時代の台北が出来上がっていく過程を再現しようという視点で作られているからだろう。
そのため読み進めていくうちに、いつしか自分が昔の時代に紛れ込み、次々と建築物が完成していくシーンを目の当たりにしているような錯覚に陥る。
また、建築物の紹介については建築技術の範囲に留まらず、当時の社会状況にまで触れていることが本書のもうひとつの特徴だ。
衛生環境を改善するため公設市場が多数建設されたり、台湾統治の精神を象徴するため豪勢な総督官邸や台湾神社が作られたり、こうした紹介を読むことでより明確に当時の社会を知ることができる。
単なる建物図鑑ではなく、時代を超えた旅が楽しめる一冊である。

 

『図説 日本統治時代の台北城』

原題:日治台北城
著者:徐逸鴻(じょいつこう/シュイイーホン)
出版社:猫頭鷹出版
仕様:168ページ、縦組み、単色。201310月初版刊行。
カテゴリー:芸術設計、建築

 

 

著者:徐逸鴻(じょいつこう/シュイイーホン)

1977年桃園県観音郷生まれ。現在台湾で注目を集める古跡建築の研究者及びイラストレーター。古跡研究と関わって15年。李乾朗工作室でアシスタントとして数多くの建築測量図やイラスト制作の仕事に携わる。
中国文化大学建築と都市設計学科卒業、台北芸術大学建築と古跡保存研究所で修士取得。現在は北京清華大学建築歴史と文物建築保護研究所の博士クラスに在籍。
著書に「圖説艋舺龍山寺」、「圖説清代台北城」など。

 

 

目次

 

台北における日本統治のはじまり
日本統治初期の建築
明治の洋風建築
ルネッサンス式建築
赤レンガ建築と辰野式建築
総督官邸[今の台北賓館]
台湾神社[現存せず。戦後跡地に圓山大飯店が建てられた]
明治橋と台北橋[明治橋は戦後中山橋と改名、近年撤去された。台北橋は戦後改築]
新起街市場[今の西門紅楼(西区文創中心)]
水道施設
三線道路[今の中山南路、愛国西路、中華路、忠孝西路]
表町、本町、栄町[今の館前路付近、重慶南路一段、衡陽路]
鉄道の建設

鉄道部建築群
小学校と公学校
総督府医学校[戦後ほとんどが取り壊され、台大医院新館に改築]
新公園[今の二二八和平紀念公園]
専売局と樟脳工場[戦後は公売局]
総督府博物館[今の台湾博物館]
台北医院[今の台大医院旧館]
総督府[戦時に被爆、戦後改築後今の総統府]
政府機構
近代建築の室内空間
建築技師
日本式住宅
日本の仏寺
北投温泉
旅館
映画館
台北帝国大学[今の国立台湾大学]
銀行
建功神社[改築され、現在は国立教育資料館と南海学園]
史跡保存
台北博覧会
台北公会堂[今の中山堂]
松山煙草工場[今の松山菸廠/松山文化創意園区]
赤レンガと化粧張りレンガ
基隆港
台北大空襲

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