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23歳から大量に本を読むようになった陳柏霖(チェン・ボーリン)、
すでに役者としてさまざまな役柄に挑戦していた彼が
惹かれたのはどんな作品だったのでしょう?

取材・構成=西本有里、撮影=熊谷俊之

 

もっと台湾(以下、も):この作家の本は必ず読むという、敬愛する作家を教えていただけますか。
ボーリン(以下、ボ):ポール・オースター、レイモンド・チャンドラー、
アルバート・カミュ。カミュの作品はどれも素晴らしく、僕が信奉する作家といえます。

:これらの作家の作品と、どのように出会ったのでしょう?
:すべては縁ですね。
僕は大して重要でないことを、美しい文字で飾り立てて描くような作品は好みません。
赤裸々な……直接、心に響く作品が好きです。
本を読むことっていってみれば“自分探し”ですよね。

:ポール・オースター、レインモンド・チャンドラーの小説で
いちばん好きな作品はどれですか。
:ポール・オースターは、ニューヨーク3部作(原題:The New York Trilogy)と
『ブルックリン・フォリーズ(原題:The Brooklyn Follies)』、
チャンドラーは『長いお別れ(原題:The Long Goodbye)』と
『大いなる眠り(原題:The Big Sleep)』。
どれも素晴らしい作品で、登場人物がものすごく魅力的ですよね。
主人公の探偵フィリップ・マーロウは頭がいいだけでなく、
カッコよくてユーモアーもあって、何もかも持っているのに
全然嫌らしくならない大好きなキャラクターです。

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:新作映画『後會無期』1について聞かせてください。
この映画は中国で現在最も影響力のある作家、
韓寒2が書き下ろし、監督として撮り上げた映画です。
初めて脚本を読んだときの感想を聞かせてください。
:興味深い物語なので面白い映画になると思いました。
韓寒はこれまでたくさんの小説を書いており、彼自身がとてもユニークな方です。
彼とは以前にも会ったことがありましたし、この映画のプロデューサーとは
2010年の『ブッダ・マウンテン〜希望と祈りの旅(原題:觀音山)』3
一緒にお仕事をしていましたから、自然な流れで皆で一緒に映画を撮ろうよ!
ということになりました。

:韓寒監督は、作家、ブロガー、レーサーと
さまざまな顔を持つ多才な人物ですが、ボーリンさんから見てどんな方ですか。
:自分とって何が必要なのかよくわかっている人だと思います。
とても頭がいいし、EQも高い。
彼は映画の撮影現場において一度も感情を高ぶらせたことがなかったんですよ。

監督という仕事においていちばん重要なのは、
何を語りたいか、しっかり自分のテーマを持っていることです。
彼はこれまでたくさんの小説を書いてきましたが、
一貫して自分が語りたい物語の方向性をもっていたし、ブレない人ですね。

:映画で一緒に仕事をする前に韓寒さんの小説を読んだことはありましたか。
:韓寒のことは知っていましたが、作品を読んだことはありませんでした。
今回映画で一緒に仕事をして、読み始めたのです。

そして今回、皆さんに推薦したい本は
彼の小説『1988:我想和這個世界談談(1988:僕はこの世界と話したい)』4です。
この小説は、車の話という点で映画「後會無期」と共通しており、
2作とも主人公が誰かと共に車で旅に出ます。
映画と小説は全く異なる内容を描いていますが、
本を読んでから映画を見れば、違った雰囲気を感じることができるのではないでしょうか。

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韓寒はこの世界を読み解くことにおいて、主観的で強い考えを持っており、
言葉遊びが巧みな作家です。ですから日本語に翻訳する上では
難しい部分が多々あるかもしれません。
彼は“80后”5の作家です。
中国において80后とは縛られることから逃れようとした時代。
この小説然り、韓寒然り、多くの人の心の声を代弁していると思います。
この本から若い世代が描く中国の違った一面を理解することができると思います。

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陳柏霖(チェン・ボーリン)
1983年8月27日、台湾台北生まれの俳優。
2002年の台湾・フランス合作映画
『藍色夏恋(原題:藍色大門)』の主演でデビューし、その後
『最後の恋,初めての恋(中国語名:最後的愛,最初的愛)』
『about love アバウト・ラブ 関於愛(中国語名:關於愛)』
『台北に舞う雪(中国語名:台北飄雪)」など
多くの合作映画に出演を重ねる。2011年に出演したドラマ
『イタズラな恋愛白書(原題:我可能不會愛你)』で演じた
一途に一人の女性を思い続ける
李大仁(リー・ダーレン)役で大ブレイクを果たした。
日本の公式サイトはこちら→

 

  1. 中国のベストセラー作家・韓寒が自身で脚本を書き下ろした初監督ロードムービー。中国では2014年7月24日に公開され、台湾では2014年秋に公開予定。 []
  2. 1982年9月23日、上海市生まれの作家。デビュー作の『三重門(上海ビート)』は203万部のベストセラーとなり、中国で“韓寒現象”なる言葉を生み出した。雑誌編集者、プロレーサー、歌手、ブロガーとしても活動し、2014年には『後會無期』で監督デビュー。 []
  3. 2011年に中国で公開された李玉(リー・ユー)監督の世代を超えた友情を描いた感動作。日本では2010年の第23回東京国際映画祭にて最優秀芸術貢献賞、范冰冰(ファン・ビンビン)が最優秀女優賞を受賞し、2013年に劇場公開された。 []
  4. 2010年9月に国際文化出版社から出版された韓寒の長編小説。廃車寸前だった1988年製のワゴン車に乗って、その車を修理してくれた友人に会いにいこうとする主人公と、いつしか道連れとなった妊娠中の売春婦・ナナとの奇妙なドライブの旅を描く。 []
  5. 中国における用語の一つで、1980年代生まれの世代を指す。一人っ子政策施行後に生まれ、その多くが一人っ子であるため、親や祖父母からの愛情を一身に受け育ったとされ、一般的に「ワガママ」「最も利己的な世代」「最も反逆の世代」「世間も知らず、最も期待できない世代」と長い間厳しい評価を受けてきた。しかし、“80后”の年齢が上がるに伴い、彼らに対するイメージや偏見に変化が現れる。特に2008年の四川大地震発生後、また北京オリンピックの聖火リレーなどで、彼らがとった若者らしい気骨ある精神は愛国ブームの火付け役となり、愛国、思弁、正義、人間らしい積極的な思想を広めたと各種メディアが積極的な報道を始め、「“80后”は主流派」といわれるようになった。 []