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台南を知らなければ台湾史は分からない(1)

文=黒羽夏彦

 

いま、台南がブームである。台湾では台南をテーマとした本が相次いで刊行されて話題になっており、こうした近年の台南人気については野嶋剛「台南ブームを象徴する『移民台南』『樂居台南』」(「もっと台湾」2014818日付)で紹介されている。

台南を訪れる日本人観光客が例年に比して増加したという報道もある。一青妙『わたしの台南──「ほんとうの台湾」に出会う旅』(新潮社、2014年)、ヤマサキタツヤ『オモロイ台南──台湾の古都でしこたま食ってきました』KADOKAWA/エンターブレイン、2014年)のように、文字通り台南に焦点をしぼった本が日本でも出版された。また、大洞敦史『台湾環島──南風のスケッチ』(書肆侃侃房、2014年)の著者は台南在住で、本書でも台南に一章が割かれており、この街への愛着がうかがわれる。

それにしても、なぜ台南なのか? 『わたしの台南』の著者、一青妙さんは日台のハーフで1970年代に幼少期を台北で過ごした。しかし、台北では都市化による変貌が著しく、幼い頃の脳裏に刻み込まれた光景はもはや見られない。あの懐かしい台湾らしさはどこへ行ってしまったのだろう? そうした思いを抱えていた時にたどり着いたのが台南だったという。

観光客ばかりでなく、台北などの大都市で働いていた台南出身者のUターンも増えていると聞く。せわしない都市生活に疲れた人々が、台南の醸し出すある種のノスタルジーにぬくもりを求めているのかもしれない。あるいは、台湾人アイデンティティーの確立が歴史的ルーツとしての台南への関心を高めているという背景も指摘できるだろう。

そもそも歴史をひもとけば、台南にいた先住民族であるシラヤ族の言葉で「タイアン」といったのが「台湾」の語源とされている。オランダ東インド会社が城塞を築き、それを奪取した鄭成功が拠点を置き、清代末期に行政の中心が台北へ移動するまで、ここ台南こそが台湾の首都であった。開発が遅れていることもあって、台南の街中では古いたたずまいがそこかしこに残っており、寺廟の多さは台湾で一番だし、日本統治時代の建物もしばしば散見される。台湾の歴史が、それこそ地層のように積み重なっている様子を見出せるのが台南という都市の大きな特色である。

台南を見に来なければ、台湾の歴史は理解できない。そう言っても決して過言ではない。

(続きます!)

 

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OLYMPUS DIGITAL CAMERA黒羽夏彦(くろはなつひこ) 台湾専門ブログ「ふぉるもさん・ぷろむなあど」、書評ブログ「ものろぎや・そりてえる」を運営。1974年生まれ。出版社勤務を経て、2014年3月より台南の国立成功大学文学院華語中心へ留学。東アジアの近現代に交錯したさまざまな人物群像に関心を持ち、台湾に視点を置いて見つめ直したいと考えている。