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番外編「私を(台湾の)古本屋に連れてって」

舊香居、茉莉二手書店(MRT台電大楼、公館駅界隈)ほか

 文=天野健太郎

旅先で古本屋を見かけたら中に入るのは当たり前である。が、海外は古本屋がじつに少ない(東アジアと東南アジアしか知らないが……)。

幸い、台北は古本屋がたくさんある。古くは牯嶺街(クーリンチェ)が有名な古書街として知られていた。終戦後帰国する日本人官僚たちがここで、持ち帰れない蔵書を売ったのがその起源とされ、往時は百以上の古書商がいたという。数年前解体された光華商場も地下にたくさん古書店があったし(最後はVCD屋に侵食されていたが)、この10年は台湾大学と台湾師範大学の周辺に、神保町とまではいかないが、新しいタイプの古書店が集中している。

MRTを下り、いつも通り師大路で客家板條(米で作った客家うどん)を食べたあと、(鶏肉売りも、果物売りもいなくなった)午後の市場を抜ければ、コカ・コーラのアンティーク自販機が窓越しに見える。古書店「舊香居」である。マンションの1階にある細長い店舗は落ち着いた照明で、骨董屋かカフェにも見える。左右壁際に配した本棚に古書が整然と並び、真ん中の島にはプレミアつきの品がガラスケースに収まる。横積みの本など一冊も見当たらず、通路はゆったり。椅子まである。

内装がシャレているに越したことはないが、古本屋に行く理由は無論実利にある。

誠品書店は新刊など一部を除けば定価販売だし、一割引会員になるのも面倒なので新刊なら同じエリアにある「政大書城」や「唐山書店」など割引(二割程度)がきく書店で買うことが多い(が、ジャンルでなく出版社ごとに並んでいるのが難)。しかし、台湾出版事情の残念なところは、新刊でもすぐ品切れになって書店で入手できなくなることで、まして文庫というシステムがないから、ベストセラーや定番たる古典作品でもなかなか市場にストックされない。値段が安いうえ、ものがここにしかないのだから、古書店に行くのは当たり前である。

そんな当たり前を作ったのは、師大・台大界隈にそれぞれ店を構え、台湾の古書店業界を変えたとされる「茉莉二手書店」である。明るく、キレイな内装ときっちり分類された棚作りで(それまでの文化人や貧乏学生だけでなく)一般の広い客層を古書店に呼び込んだ。それも、オーナーがかつて勤務していた7-11から学んだというから面白い。客層が広がった結果、品揃えも年々よくなっている(買取り増加の効果が出ている)。

今回「茉莉」では(誠品書店になかった)現代小説を45冊、「舊香居」では日本統治時代の写真集(絶版)を2冊買った。シリーズ揃いの大判写真集(絶版)は、まとまった価格ゆえ諦めたが、宝探しの楽しみを台湾でも再発見した。

本文は『な~るほどザ台湾』20141月号掲載を加筆・修正したものです。

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プロフィール

天野健太郎(あまの けんたろう)
1971
年、愛知県生まれ三河人。京都府立大学文学部国中文専攻卒業。2000年より国立台湾師範大学国語中心、国立北京語言大学人文学院へ留学。帰国後は中国語翻訳、会議通訳者。聞文堂LLC代表(ツイッターアカウント「 @taiwan_about 」)。台湾書籍を日本語で紹介するサイト「もっと台湾(http://www.motto-taiwan.com )」主宰。訳書に『台湾海峡一九四九』龍應台著(白水社)、『交換日記』張妙如、徐玫怡著(東洋出版)、『猫楽園』 猫夫人著(イースト・プレス)。『日本統治時代の台湾』陳柔縉著(PHP研究所)。俳人。