所変われば本違う。
台湾で出版されている本たちは、日本の本たちと、いろんなところがいろんなふうに違うもの。
いったい、どこがどういうふうに違うのか、台湾人が見る違いを一つ一つご紹介していきます。
次に台湾へ行ったら、ぜひ書店を歩いてみてください。

台湾の出版社あれこれ

文=黄碧君

台湾は人口23百万人に対し、年間の出版点数は4万を超える出版大国と言えます(1人当たりの出版点数は日本の約3倍とのこと)。出版社も数が多く、年に4冊以上刊行している会社で800社以上あります。出版社ごとに版型装幀をパターン化している場合が多く、(表紙はそれぞれ違いますが)買ってきた本を本棚に並べた時に、背表紙の色がそろっているために、同じ出版社の本なのだと気づくこともあります。

では、台湾の出版社にはそれぞれどんな特徴があるか、簡単に紹介しましょう。まずは大手総合出版社をあげてみます。

台湾商務印書館:1947年設立。前身は上海にある「商務印書館」。中国古典ものや歴史もの、研究書や教科書がメインでしたが、近年社会、思想、科学、世界史などの分野でもたくさんの良書を出版しています。

皇冠文化1954年、作家・瓊瑤〔けいよう〕の夫・平鑫濤〔へいきんとう〕『皇冠』という文芸誌を創刊し、その後次第に規模を拡大し総合出版社になりました。「皇冠大衆小説賞」や「島田荘司推理小説賞」などの賞を主催するほか、本社ビルには小劇場などのスペースもあります。瓊瑤、張愛玲〔ちょうあいれい〕、三毛〔サンマオ〕、張曼〔ちょうまんけん〕など台湾有名作家の作品を多数出版しながら、ミラン・クンデラの作品や、ハリーポッターシリーズ、また最近では万城目学のシリーズなど日本の翻訳本もたくさん出しています。

聯經出版:大手新聞社「聯合報」のグループ会社で、1974年に設立され、今年40週年になります。「聯合発行株式有限会社」という独自の販売通路を持っています。今まで独立していた文芸誌『聯合文学』も30週年を迎える2013年に聯の下に置かれました。近年、陳芳明『新台湾文学史』、夏曼・藍波安〔シャマン・ラポガン〕『天空的眼(空の眼)』など台湾文芸作品に加えて、吉田修一『路』、与那原恵『美麗島まで』、一青妙『我的箱子』、野嶋剛『ふたつの故宮博物館』など、台湾にゆかりのある作品を積極的に翻訳出版しています。

時報出版:1975年設立当時は大手新聞社「中国時報」のグループ会社でしたが、2008年「中国時報」が旺旺集団に買収された際に独立しました。来年40周年を迎えます。設立当時は新聞に連載された台湾有名漫画家・蔡志忠〔さいしちゅう〕、蕭言中〔しょうげんちゅう〕、敖幼祥〔ごうようしょう〕、朱〔しゅとくよう〕らのユーモアな諷刺漫画を多く出版していました。『シティーハンター』、『バウ』、『Dr.スタンプ アラレちゃん』など日本の漫画も多く翻訳出版しました。なお、村上春樹、よしもとばななをはじめ、イタロ・カルヴィーノなど海外の小説や作品にも力を入れています。

遠流出版:1975年に王榮文が設立し、多くのオリジナル企画本を出して、好評を得ました。胡適〔こせき〕、李敖〔りごう〕、金庸〔きんよう〕、柏楊〔はくよう〕などの作品集を出版するほか、ミステリーシリーズ「謀殺門店」、児童書や絵本シリーズ「絵本台湾昔話」、「大手牽小手(大きい手と小さい手を繋ごう)、妹尾河童の「河童が覗いた」シリーズなど人気本を多数出版しています。近年は映画『セデック・バレ』関連本や『KANO』の漫画など台湾の歴史に関する本やオリジナル本にも力を入れています。

大塊文化:出版業界で活躍する編集者であり、作家でもある郝明義〔かくめいぎ〕が1996年に創設しました。社会性が強い作品の他、漫画、ビジュアル本をジャンル問わず多く出版してきました。有名な絵本作家・幾米〔ジミー〕の作品シリーズやオリジナル企画のコミックエッセイ『交換日記』など人気作品をたくさん刊行しています。

城邦文化1996年麦田出版と猫頭鷹出版、商周出版三社が合併し設立した出版グループです。『商業周刊』、『PChome電脳家庭』など多数の雑誌を発行しています。現在傘下に40社の小会社を持つ、台湾最大の出版グループです(城邦文化と同じようなグループには「讀書共和國」、「大雁グループ」、台中に拠点がある「晨星グループ」、創立30年の「圓神出版」などがあります)。

 

次に、各ジャンル別にどんな出版社があるかご紹介しましょう。

ビジネスや経営、経済及び自己啓発がメインな出版社なら、天下雑誌と天下文化があります。老舗の文学出版社には『印刻文学生活誌』の雑誌を発行する印刻文学のほか、九歌出版と雅出版などがあります。児童書、絵本の出版なら信基金出版、親子天下などが有名でしょう。

ほかにも、漫画学習本やイラストもの、実用書、ブランド雑誌など多岐にわたる本を出す三采文化、文学寄りの傾向が強く、北京にも会社を持つ新經典、トレンドや社会現象をいちはやく出版することを得意とする行人出版、地元をクローズアップした良書を多数手がける玉山社など、個性的な独立系出版社もたくさんあります。

また、日本の現代小説をメインに出す新雨出版、日本のミステリーをメインに出す独歩文化、アート関連書とアート雑誌が有名な典蔵文化、アイデア満載の装幀でデザインや芸術、建築などのビジュアル本を出すことで知られている田園城市などがあります。

もちろん、ほかにも漫画、料理、旅行、パソコン、その他専門書など様々なジャンルの出版社がありますが、今回は一般書と文芸を中心にまとめてみました。台湾の本屋さんを訪れる際には、手に取った本の出版社もぜひチェックしてみてくださいね。

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黄碧君(ふぁん・びじゅん)
ellie1973年生まれ、台湾人女性。書籍翻訳・通訳家。大学卒業まで台北で暮らした後、日本の東北大学に留学、その後はアメリカ語学留学、結婚を経て、現在は日本人夫と台北で暮らす。台北で書店や版権仲介会社の勤務経験をもつ。全国通訳案内士、沖縄地域通訳案内士の資格を取得。2012年、日本人に台湾本の多様性と魅力を伝えるべく、台湾書籍を提案・翻訳・権利仲介する聞文堂LLC合同会社を設立。本は生涯の最良養分と信じて、台湾本のコーディネートと日本全国を旅するライターを目指す。
【主な翻訳作品】
辻仁成・江國香織『恋するために生まれた』幻冬舎、(中文題『在愛與戀之間』皇冠出版社)
寺山修司『幻想図書館』河出書房新社(中文題『幻想圖書館』邊城出版社)
奈良美智『ちいさな星通信』ロッキング・オン(中文題『小星星通信』大塊出版社)
青木由香『奇怪ねー台湾 不思議の国のゆるライフ』東洋出版(中文題『奇怪ね』布克文化出版社)
杉浦さやか『週末ジャパンツアー』ワニブックス(中文題『週末日本小旅行』時報出版社)
荻原浩『あの日にドライブ』光文社(中文題『那一天的選擇』商周出版社)
島田雅彦『エトロフの恋』新潮社(中文題『擇捉島之戀』台灣商務出版社)
三浦しをん『舟を編む』光文社(中文題『啟航吧!編舟計畫』新經典出版社)
松浦弥太郎作・若木信吾写真『居ごこちのよい旅』筑摩書房(中文題『自在的旅行』一起來出版社)
角田光代『あしたアルプスを歩こう』講談社文庫(中文題『明天到阿爾卑斯山散步吧』日出出版社)など。