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部分訳

旭峰号
034-網 開隆宮の傍らにたたずむ旭峰号は、陶磁器や日用品を販売する特色ある商店です。店舗の二面が開放された二階建ての建築は、日本統治時代のアールデコ様式で、壁面は洗い出し仕上げ。付け柱の装飾文様やベランダの飾りに建造当時のこだわりが見て取れ、あの頃ではたいそう立派な店構えだったに違いありません。

開隆宮に隣接しているため、神々に捧げる「金紙(あの世のお金)」、口紅やおしろい(開隆宮は主に七人の仙女を祀っているため)などのお供えも売っています。開隆宮にお参りに行くなら、ここに立ち寄って珍しいお供え物を見ていくといいでしょう。そんなユニークな雑貨店「旭峰号」は、まるで台湾の古き良き時代に繋がるタイムトンネルのように、時空の交錯を思わせる美しい錯覚の中で、私たちを1960年代の純朴な時代へと誘います。
台南市中西区中山路79巷6号

開隆宮
035-網 1732年(清雍正十年)に建立された開隆宮は、七人の仙女「七娘媽」を祀っている廟です。七人の仙女のうち「織女(織姫)」は人間界の「牛郎(彦星)」と夫婦になりますが、天界の罰を受けて引き裂かれてしまいます。その二人の間に生まれた子どもを育てたのが、ほかの六人の仙女たちでした。このため、七娘媽は子どもの成長を見守る神として信仰されています。

毎年七夕(旧暦7月7日)に開隆宮で行われる「做十六歳」は、数百年前から台南に伝わる成人式です。言い伝えでは、「五條港(清代に切り開かれた五本の小運河)」での労働報酬が十六歳になると「大人」の賃金になったため、親は満十六歳になった子どもを連れて開隆宮にお参りし、大人の賃金がもらえる年齢まで子どもの成長を見守ってくれたことに感謝したことが起源だということです。

毎年、台南市政府主催の「七夕十六歳芸術祭」が開催されます。
興味のある方は旧暦7月7日にぜひ台南へ!

台南市中西区中山路79巷56号 (06)2212137

振発茶行

「振発茶行」へは数え切れないほど訪れていますが、「そこ」に対する愛着は変わることはありません。屋内には歳月が醸し出す懐古的な趣が漂い、茶色く古びた机、椅子、空気が、積み重なる時間の中で、茶と同じような香りや色、味わいをにじませています。
私たちが「おじいちゃん」と呼んでいる厳燦城さんは、十七歳の時に父親を亡くすと店を継ぎ、 二人の姉の支えを得て四代目の主人となりました。おじいちゃんの一番上と三番目のお姉さんは九十歳という高齢で大往生しているので、お茶は確かに長生きの秘訣なのかもしれません。九十になるおじいちゃんは振発茶行を経営して72年。その継承と堅持の精神に敬意を払わずにはいられません。ただ、体が昔のように丈夫ではないので、今は茶葉を包んだり、店の歴史を客に伝えたりする店番を雇っています。
【おじいちゃんは2011年10月に天に召されました。この文章もってここに敬意を捧げます。】

その昔、振発の錫茶缶に入っていたのは武夷茶(中国福建の銘茶)でしたが、今はすべて台湾茶です。台湾茶の焙煎技術はこの数十年の間に進歩し、その味は今や武夷山産に勝るとも劣りません。1836年創業の店内には三十個あまりの黒光りした古い茶缶が並び、缶には武夷茶の各産地が書かれた古い紙が貼られています。聞けば、これらの紙も五十年以上の歳月を経ているのだそうです。古びた茶缶に詰められた昔の味わい、まだらの紙片が伝える遠い昔の物語……。四角い毛辺紙(竹の繊維でつくられた紙)に茶葉を手作業で包むスタイルは、昔から変わらない茶の芸術であり、最後に牛角の判子を押し、真っ赤な印影に老舗茶問屋のこだわりを込めています。老舗のこうした茶文化に、古い町の発展と伝統文化が残した昔日の物語を見て取ることができます。
完成したスケッチにサインを求めると、おじいちゃんは書道のような筆遣いで書いてくれたのですが、その時に原稿の上に紙をあて、原稿を汚さないようにと気遣ってくれました。別のある日に友人を連れて訪れ、一緒に記念写真を撮ることになった時も、肌着一枚だったおじいちゃんはきちんとした服に着替えてからでなければ写真は撮らないと譲りませんでした。日本統治時代に日本教育を受けたおじいちゃん。こうした些細なところから、その時代の精神を感じたのでした。

台南市中西区民権路一段137号 (06) 2223532
11:00~19:00

剣獅ミニ知識
剣獅の由来

明朝が清朝に滅ぼされると、鄭成功は1661年に軍隊を率いて台湾に渡り、当時台湾を占拠していたオランダ軍を討ち払います。この時、鄭成功の軍隊はオランダ軍の砲弾から身を守るため、藤製の盾に鉄板を取り付けて強化し、さらに盾の中心に獅子の姿を鋳込み威勢をつけました。その後、安平地区では訓練帰りの兵士が盾を自宅の門に掛け、剣を盾に鋳込まれた獅子の牙の間に差し込んだので、盾はまるで剣をくわえた獅子のようでした。泥棒も「剣獅」の掛かった兵士の家には近寄らなかったため、どの家でも「剣獅」を飾るようになり、ついには厄よけと家内安全の象徴になったと伝えられています。

剣獅の種類

剣獅は剣のくわえ方によって役割が異なるとされ、剣が向かって右を向いたものは「幸福祈願」、左を向いたものは「魔よけ」、二本の剣が交差しているものは「邪気祓い」。また、剣獅の色は身分や地位を示し、赤は軍隊の副将、または裕福な家、緑と黒はそれぞれ中級兵士と兵卒、或いは一般庶民とされています。さらに道教の始祖・張天師〔ちょうてんし〕の宝剣とされる「七星剣」をくわえたものや、蝙蝠〔こうもり〕と合体した姿のもの(“蝙蝠”は“蝠”の字が中国語の“福”と同音のため、縁起の良い動物とされている)、風水を高める八卦図や太極図と組み合わせたものなど、その姿形もさまざまです。しかし、どんな色や姿の剣獅であっても、邪気を祓い、家々を守ることに本来の意義があるのです。

正合興蜜餞と剣獅
044-網 「蜜餞〔ミージェン〕」とは果実を砂糖漬けにしたもの。正合興はもともと延平老街85号にありましたが、数年前に老街(昔ながらの街並み)の入り口に新たに店を構えました。百年続くこの店では、昔ながらの製法を守り続けるばかりでなく、新鮮な果物に漢方薬を合わせた蜜餞づくりにも挑戦しています。フルーティな香りにほんのりと生薬の独特な香りが加わり、食欲を増進させ健康にも良さそうです。

正合興の外壁にはたくさんの剣獅があります。中でも店の入り口の上方にある三匹の剣獅は特に歴史を感じさせ、一見の価値があります。蜜餞を買いに来たら、視線を少し上に向けて剣獅たちを鑑賞することもお忘れなく。
無奈剣獅(如何せん剣獅)
古椎剣獅(可愛い剣獅)
火紅剣獅(紅の剣獅)

台南市安平区古堡街47号(延平老街入り口)
(06) 2268330 09:00~22:00

伯龍坊と剣獅

店内は古式ゆかしいムードに満ち、壁にはご主人自慢の安平剣獅のコレクションが所狭しと飾られています。最も古い剣獅は百年以上の歴史があるとか。ここでは安平のグルメを楽しみながら、さまざまな表情の剣獅を鑑賞できます。お薦めはしっかりとした食感の昔ながらの豆花(豆腐スイーツ)。

台南市安平区古延平街140号
(06) 2267373 09:00~21:00(月曜定休)

茉莉巷(ジャスミン小道)
045-網 にぎやかな延平老街から少し入ったところに、花々の香りが立ちこめる茉莉巷があります。草花が生い茂る小さな通りは、まるで安平の秘密の花園です。

茉莉巷は住民が協力して通りを植栽で飾り、茉莉(ジャスミン)が多く植えられていることで知られ、今ではホットな撮影スポットにもなっています。通りの奥には、歳月の痕跡を豊かに残した赤レンガの壁が緩やかな弧を描いてたたずんでおり、豊かに茂った草木や花々に囲まれながら、訪れた人々をその先へと誘います。これぞ安平の裏通りの魅力と言えるでしょう。
茉莉巷に踏み入れると、にぎやかな安平商圏とはうって変わり、質朴でひっそりとしたもう一つの安平が楽しめます。季節が合えばジャスミンの香りが辺りに漂います。

 
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文・訳=小栗山智(おぐりやまとも)

東京外語大中国語学科卒、台湾輔仁大学翻訳学研究所日中通訳科修了。
香港で放送通訳、金融翻訳などのインハウス通翻訳を経てフリーランスに転向。
現在台湾在住。