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台湾マンガ女子の、ラブ以外のすべてがある

 文=天野健太郎

交換日記とはうら若き少女がこっそりやるものではなかったか? 青春の日々に恋の悩みや将来への不安などを親密な手書き文字で共有する秘密のノートは本来、はしかのように一瞬熱中して、その後二度と顧みられないものではないのだろうか?
ところが台湾には17年にわたり交換日記を広く公開する女性ふたり組がいる。しかも始めた当時、ふたりは立派な大人だった……。

そのふたりとはマンガ家の張妙如(ミャオ)と徐玫怡(メイイー)。彼女たちはファックスを使って毎日交換日記をし、その手書きの文章とイラストをそのまま本にした──『交換日記』(大塊出版)。第1巻が1998年に出るや大ヒットとなり、以降ほぼ年1冊ペースで刊行される長寿シリーズとなった。総発行部数は40万部を超え、2014年12月に最新刊第17巻が出たばかりだ。
交換日記なので当然その日に起こったいろいろ、思ったあれこれが、おおらかで可愛い(ヘタウマとも言う)イラストとともに綴られている。だから我々外国人がなかなか知ることができない、普通の台湾人がどんな家でなにを食べ、なにをしているのかが描かれている。また鬼月(おばけが多い旧暦7月)のタブーや、旧正月の年越しに興味がある人は、その実例を絵入りで知ることができる。
もっとも彼女たちの日常のエピソードはどれも抱腹絶倒だ。例えばメイイーは自著のプロモーションでいやいやテレビに出演し(『欽ちゃんの仮装大賞』台湾予選!)、ありえないようなサムイ経験をする。ミャオはミャオで〆切前なのに突然部屋の模様替えをしてみたり、九份に鉄人レース(?)に出かけたりと行き当たりばったりの展開(性格)のなすがまま、彼女は新宿アルタ前に立ち、空に向かって手を振る。

生活と同時に彼女たちは表現者としての悩み、あるいは普通の自分で生きることの難しさを、真摯に(かつ自分つっこみを交えて軽妙に)書き記す。つまりこの本には、台湾女性マンガ家ふたりの、ラブ以外のすべてが赤裸々に描かれているのだ(ふたりは既婚だが、恋バナというより、結婚という共同生活をどう生きるかが書かれている)。きっとその率直で飾らない筆致(手書きだし)と自分を笑いとばす強さが、ファンの心を掴んだのではないだろうか? でなければ日常を描いただけの日記が17巻まで続くはずがない。
その始まりである『交換日記』(第1巻)の日本語版が拙訳により、東洋出版(青木由香著『奇怪ねー台湾』日本版を刊行した出版社)より刊行されている。イラストは原著のまま、訳文も原著のテイストを生かして手書きしてもらった労作です。ぜひ書店で手に取り、台湾マンガ女子の日常をかいま見て、笑い、共感していただけたら。

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プロフィール

天野健太郎(あまの けんたろう)
1971
年、愛知県生まれ三河人。京都府立大学文学部国中文専攻卒業。2000年より国立台湾師範大学国語中心、国立北京語言大学人文学院へ留学。帰国後は中国語翻訳、会議通訳者。聞文堂LLC代表(ツイッターアカウント「 @taiwan_about 」)。台湾書籍を日本語で紹介するサイト「もっと台湾(http://www.motto-taiwan.com )」主宰。訳書に『台湾海峡一九四九』龍應台著(白水社)、『交換日記』張妙如、徐玫怡著(東洋出版)、『猫楽園』 猫夫人著(イースト・プレス)。『日本統治時代の台湾』陳柔縉著(PHP研究所)。俳人。