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永瀬正敏を虜にした女の子

 文=天野健太郎

子供の涙は、国を問わず無敵らしい。

4歳の女の子がパパに怒って涙を流す映像がネットにアップされ、瞬く間に再生100万回を超える人気となった(20124月のこと)。彼女、チャオチャオがまんまるの目に涙をためながら、舌っ足らずな声で「おもしろい歌、歌ってくれたら許してあげる」とねだる。パパがふざけた歌を歌うと、「おもしろくない!」ともっとねだる。でも途中で、チャオチャオの顔はもう笑ってしまっているのだ。

その後も人気は衰えず、チャオチャオとチャオパパのなんでもない日常を綴ったフェイスブックciaociaoroseは、2015年1月現在、97万人ものファンがいる(ちなみに台湾7-11のフェイスブックで200万人であるから、そのすごさがよくわかる)。もちろん泣き顔だけじゃなく、笑顔やおすまし、ふざけ顔、真剣な表情から寝顔まで、チャオチャオの百面相に多くの台湾人が癒やされている。

20142月に台湾で公開された映画『KANO』に、彼女は子役として出演し、永瀬正敏と共演を果たした(馬志翔〔マー・ジーシアン〕監督、『セデック・バレ』の魏徳聖〔ウェイ・ダーション〕プロデュース。1931年中京商業と大深紅旗を競い甲子園を沸かせた嘉義農林の実話を描く。永瀬正敏は日本人、台湾人、先住民族混合チームを率いた近藤兵太郎監督を演じる)。 映画の中でチャオチャオが涙を流したかどうかは劇場で確認するしかないが、共演中、永瀬も彼女の可愛さにメロメロだったという。

とはいえチャオチャオは芸能人ではない。あくまで素人としてたまにテレビなどに出演するだけである。CMや映画への出演依頼は当然たくさんあるのだが、ほとんど断っている。しかもパパが勝手に決めるのでなく、きちんとその利害を説明したうえで、チャオチャオ本人に決めさせるのだそうだ。

我是一個于卉喬 永瀬正敏を虜にした女の子

チャオチャオの最初の本、『我是一個于卉喬(わたしがチャオチャオです)』(喬爸〔チャオパパ〕著)は、彼女が生まれてから、5歳になるまでの生活記録である。シングルファーザーのチャオパパは会社を辞めて(保育園に入るまでは)、チャオチャオのそばにいることに決め、いずれは離れるときが来るのだから、と、その毎日を写真で記録する。

チャオパパはただ猫っかわいがりするのでなく、チャオチャオに「自分で決める」ことの大事さを教える。しつけはけっして頭ごなしでなく、子供と対等に、理由を説明して(あるいは訊いて)、物事の筋を諭すという。もちろん厳しく叱れば、泣いたりすることだってあるけど、ふたりはいつも同じ目線でいるから、チャオチャオがレンズ(パパ)から目をそらすことはない。チャオチャオの写真はだから嘘や気取りがなく、いつでもまっすぐなのだ。

※チャオチャオが出演している映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』は2015124日日本公開です。

KANO』公式サイト

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プロフィール

天野健太郎(あまの けんたろう)
1971
年、愛知県生まれ三河人。京都府立大学文学部国中文専攻卒業。2000年より国立台湾師範大学国語中心、国立北京語言大学人文学院へ留学。帰国後は中国語翻訳、会議通訳者。聞文堂LLC代表(ツイッターアカウント「 @taiwan_about 」)。台湾書籍を日本語で紹介するサイト「もっと台湾(http://www.motto-taiwan.com )」主宰。訳書に『台湾海峡一九四九』龍應台著(白水社)、『交換日記』張妙如、徐玫怡著(東洋出版)、『猫楽園』 猫夫人著(イースト・プレス)。『日本統治時代の台湾』陳柔縉著(PHP研究所)。俳人。