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キュートなルックス、温かい人柄で日本でもプー監督の愛称で親しまれている瞿友寧(チュウ・ヨウニン)監督。「イタズラなKiss〜惡作劇之吻〜」や「イタズラな恋愛白書~In Time With You~」等、アイドルドラマを撮らせたらこの人の右に出る者はいないと言われる彼にご自身の読書遍歴を詳しく語っていただきました。

取材・構成=西本有里、撮影:聞文堂

もっと台湾(以下、も):これまでどのような本を読んでいらっしゃいましたか?

チュウ監督(以下、チ): 今回「もっと台湾」さんからインタビューのオファーがあったので、自分の家の本棚を見返しました。本棚にはたくさんの本が並んでいるのですが、自分の中で本棚を二つの区間に分けられるなと思いました。

一つは自分がまだ監督として有名ではなく、必死に頑張っていた頃に読んでいた本、そしてもう一つは自分が監督として認められ、ある程度名声を得てからの本。初期の本は、自身が好きで読んでいた本ばかりで、純文学がほとんどでした。

また私は詩が大好きで、楊牧 1 や鄭愁予 2 の詩をよく読んでいました。彼らの詩はとても平静で、私の想像の翼を広げさせてくれるものだったのです。

反対に後半になってからの本はとても雑多になりました。というのはある程度有名になると、出版社が様々な本を送って来るからです。小説のドラマ化を考えて欲しいとか、推薦文を書いて欲しいなどの理由で様々な本が送られて来るので、興味のない本には手が出ませんし、最近きちんと本に向き合っていなかったかな…、と気づかされました。現在読んでいる本はツールとして読む事が多くなってしまっています。ここ数日撮影する内容をリサーチする為に関連書籍を購入する事が多いです。

最近読んだ本では、目が覚めるような衝撃を受ける作品にほとんど出会っていません。若い作家の作品を読んでみても、経験が足りない事もあるのでしょうが、私たちが脚本を書く段階ですでに考えていたような内容しか書かれていない事が多いですね。言ってみれば新しい思想がない。そのような作品を採用する事は難しいです。

これは台湾文学界だけの状況なのかよく分からないですが、純文学を書く作家が減っているような気がします。もちろん毎年文学賞で受賞する作品はありますが、文学賞をとったからそれが実際の仕事に結びつく事が少ない感じがします。いくつもの文学賞を受賞した周紘立 3 さんという作家さんがいらっしゃるのですが、販売状況が芳しくなく、彼は創作に専念する事ができず、アルバイトをしながら生計を立てるしかないと聞きました。台湾の環境は文学者にとって良いとはいえないのが現状だと思います。

現代社会において情報ソースは多様化しています。様々な情報を得る為に、小説よりも雑誌を読む機会が増えています。小説でいうと、同僚に文学賞を受賞した短編小説集を定期的に用意してもらい、現代の小説家の作品に何か面白いもの、新鮮なものがないか目を通すようにはしています。

しかし、現代の小説家は形式的になってている気がしてならないのです。一つの物語を語る事は容易ではないですが、物語としてきちんと読ませる作品が減っています。思うに昔の小説家、例えば苦苓 4 や蕭颯 5 の作品はとても物語的でドラマ性に満ちていました。

日本の小説家では宮部みゆきの全集を持っているのですが、まだすべて読み切れていません。

:子供の頃読んだ本で印象深い本はありますか?

:漫画が大好きでした、日本の漫画です。小学校の頃は学校が終わるとすぐに漫画レンタル店に駆け込んで、『おれは鉄平(中国語名:好小子)』、『侍ジャイアンツ(中国語名:魔投手)』、『コータローまかりとおる!(中国語名:功夫旋風兒)』などの漫画を読みまくっていました。気に入った漫画があるとどうしても買いたくなり、お母さんからお金をくすねて(笑)漫画を買いに行きました。

瞿友寧

でも買った漫画を家に持って帰る事は出来ないので、同級生の家に置いておき、そこで読んでいました。二人で相当たくさんの漫画を買っていたので、本棚の後ろに隠された漫画がどんどん積み上がって行き、ある日その本棚が倒れてしまう事態が起こりました。同級生の両親も私の両親も子供が漫画を読む事をよしとしていなかったので、ものすごく怒られましたね。そしてそれら漫画本をすべて売り払われてしまった記憶があります。

中学生になると瓊瑤 6 金庸 7 の作品を読み始めましたきっかけは彼らの小説が映画化されていた事が大きいです。私は小さい頃から映画を見るのが大好きでしたから、人気映画の原作に興味を持ったのです。瓊瑤と金庸は全集を購入していましたから、ほぼすべての作品を読んでいると思います。

高校生になると、学校新聞の編集長となったので、文学作品をたくさん読むようになりました。先ほどお話しした蕭颯やそれ以外に張曉風 8 、席慕容 9 、王文興 10 、王禎和 11 等様々な作家の本を読んでいました、高校の頃は色々な本に手を出して読んでいました。特に印象深い本……決めるのは難しいです。

大学になると、詩集を真剣に読むようになりました。もちろん中学生の頃から詩は大好きだったのですが、そこまで深く入り込んで読んでいませんでした。また大学では映像の勉強を始めたので、映像関係の書籍、専門書を大量に読むようになりました。

(続きます!)

瞿友寧(チュウ・ヨウニン)
1970年1月8日、台湾台中生まれの監督、脚本家。公共テレビ局のドラマ監督として活躍し、2003年に初めて撮ったアイドルドラマ「薔薇のために(中国語名:薔薇之恋)」が大ヒット。その後立て続けに「イタズラなKiss〜惡作劇之吻〜(中国語名:惡作劇之吻)」や「桃花タイフーン!!(中国語名:桃花小妹)」などヒットドラマを監督し、2011年には中華圏で空前の大ブームを引き起こした「イタズラな恋愛白書~In Time With You~(中国語名:我可能不會愛你)」を監督。最新作は「你照亮我星球You Light Up My Star」。映画監督作に「假面超人(台湾の暇人)」、「親愛的奶奶To My Dear Granny」等がある。

  1. 楊牧〔ようぼく〕。194096日、花蓮生まれの詩人、エッセイスト。15歳で詩人としてデビュー、台湾本土出身の戦後世代を代表する詩人。これまで20冊ほどの詩集を出版している。兵役ののち渡米、アイオワ大学大学院を経て、カリフォルニア大学バークレー校にて博士号を取得。またW.B.イェイツ、ガルシア・ロルカ、シェイクスピアなどの中国語訳でも知られている。シアトルのワシントン大学教授を務める。日本では2006年に思潮社より出版された『カッコウアザミの歌―楊牧詩集』がある。 []
  2. 鄭愁予〔ていしゅうよ〕。1933年生まれの台湾現代詩人。鄭成功の末裔であるとの噂がある。16歳で第一作目の詩集『草鞋與筏子(わらじと筏)』を自費出版した後、『夢土上』、『衣缽』等10冊近くの詩集を出版している。現在は国立金門大学及び国立東華大学にて教授を務めている。 []
  3. 周紘立〔しゅうこうりゅう〕。1985 年、台北萬華生まれの作家、エッセイスト、脚本家。これまでに林榮三文学賞、時報文学賞など様々な賞を受賞している。最新作は20143月に九歌出版社より出版された甜美與暴烈(スウィートさと荒々しさ)』 []
  4. 苦苓〔これい〕。1955108日、宜蘭市生まれの台湾作家、テレビ・ラジオ番組の司会者。『沒結婚算你好運(結婚していなくてラッキーだったね)』にて中國時報散文賞を受賞、『遇見100分情婦(100点満点の情婦との出逢い)』にて聯合報小説賞を受賞。 []
  5. 蕭颯〔しょうそう〕。195334日、台北市生まれの台湾女性作家。彼女の初期の作品『霞飛之家(霞飛の家)』は聯合文学賞中編小説賞を獲得し、また当時彼女の夫であった張毅により「我這樣過了一生(私はこんな風に生きて来た)」として映画化されている。その他の作品に『我兒漢生(私の息子、漢生)』や『小鎮醫生的愛情(小さな町医者の愛情)』等がある。 []
  6. 瓊瑤〔けいよう〕。1938420生まれの台湾人恋愛小説家。出身は四川省成都市。9歳で『可憐的小青(可哀想な青ちゃん)』を書き、25歳で『窗外(窓の外)』デビューを飾る。1970年代末に巨星影業公司を設立し、彼女の作品の映画化、ドラマ化をスタートする。著名作に『庭院深深(奥深い庭)』、『六個夢』などがある。 []
  7. 金庸〔きんよう〕。1924310日、浙江省生まれの武俠小説第一人者中華圏ではその名を知らぬ者がいないといわれるほど、国民的な人気を誇り、日本では「中国の吉川英治」と紹介された。豊かな教養に基づいて書かれた魅力溢れる物語は、一般大衆のみならず知識人にまで支持され、それまで低俗とされていた武俠小説を文学の域にまで引き上げた。代表作に『天龍八部』『秘曲 笑傲江湖』『射鵰英雄伝』『鹿鼎記』などがある。日本では徳間書店より翻訳本が出版されている。 []
  8. 張曉風〔ちょうきょうほう〕。1941329日生まれの台湾女性作家。出身は浙江省金華、8歳の時に両親と共に台湾に移住。詩、小説、脚本など様々なジャンルの作品を発表しているが、最も有名なのはエッセイで、代表作に『地毯的那一端(絨毯の端)』がある。 []
  9. 席慕容〔せきぼよう〕。19431015日、モンゴル出身の女性詩人、エッセイスト、画家。1981年に大地出版が出版した一作目の詩集『七里香(沈丁花)』が大きな反響を呼んだ。代表作“出塞曲”は台湾の有名歌手・蔡琴や張清芳によって歌われている。 []
  10. 王文興〔おうぶんきょう〕。1939924日生まれの台湾人小説家。出身は福建省。1966年より書き始め1973年に出版された『家變』は伝統的な中国の父子間に生じた倫理観の崩壊を描き、大きな波紋を呼んだ作品。 []
  11. 王禎和〔おうていか〕。1940101日、花蓮生まれの台湾人作家。台湾大学外国語学科に進学し、先輩であった白先勇が創立した“現代文學”にて執筆を開始する。デビュー作は“現代文學”に掲載された『鬼。北風。人』。代表作に『玫瑰玫瑰我愛你(薔薇よ薔薇よ、愛している)』、『美人圖(美人画)』、『嫁妝一牛車(嫁を牛車と引き換えに)』がある。 []