所変われば本違う。
台湾で出版されている本たちは、日本の本たちと、いろんなところがいろんなふうに違うもの。
いったい、どこがどういうふうに違うのか、台湾人が見る違いを一つ一つご紹介していきます。
次に台湾へ行ったら、ぜひ書店を歩いてみてください。

「開巻年間ベストテン」(開巻好書奨)受賞作詳報

文=黄碧君 写真提供=開巻周報

2014開巻授賞式会場
前回ご紹介した台湾出版業界における最大のイベント開巻年間ベストテン(「開巻好書奨」)。2014年はどのような本が選ばれたのか受賞タイトルを見てみましょう。

中国語部門(10タイトル)

約30タイトルのノミネートから今年は9冊が選ばれました。例年と違い、今回は中国人の作品は1冊のみとなりました。劉克襄〔りゅうこくじょう〕、呉明益、駱以軍〔らくいぐん〕の著作はそれぞれ6回目、5回目、4回目の受賞となり、現在最も活躍している、常連作家と言っていいでしょう。特筆すべきは、日本人の田中実加(台湾名=陳宜儒)が、100人を超える「湾生(戦前台湾生まれの日本人)
のふるさと探しに協力した、感動的なドキュメンタリー『湾生帰郷物語(原題:湾生回家)』です。映画も今年公開する予定です。

「湾生回家」中国語予告編(YouTube

「湾生回家」日本語予告編(YouTube

 

タイトル/作者/出版社 ジャンル
大路:高速中国裡的低速人生張賛波八旗文化 ノンフィクション
回家顧玉玲印刻出版 ノンフィクション
四分之三的香港劉克襄遠流出版 エッセイ、旅、自然
耳朵借我馬世芳新経典文化 エッセイ、音楽、評論
浮光/呉明益/新経典文化 エッセイ、写真論
湾生回家/田中実加(陳宜儒)/遠流出版 ノンフィクション
女児駱以軍印刻出版 小説
誰在暗中眼睛/王定国/印刻出版 小説
黄色小説/黄崇凱/木馬文化 小説

翻訳部門(10タイトル)

約70のノミネートから10冊を選ぶという激しい競争でした。今年は資本論、環境、民主主義に関する著作が多く、台湾で多数翻訳出版されている日本の作品は、エンターテイメント系が殆どなため、受賞がなかったそうです。裏情報によると、去年は吉田修一の『路(ルウ)』、今年は太宰治『津軽』、小川洋子『人質の朗読会』、黒澤明『蝦蟇の油−自伝のようなもの』、西加奈子『ふくわらい』、伊藤計劃『ハーモニー』が最終候補に入ったのにもかかわらず、入賞を逃したたそうです。残念。

タイトル/出版社/原題/作者 ジャンル
二十一世紀資本論/衛城出版/Le Capital au XXIe siecle/Thomas Piketty(邦訳『21世紀の資本』トマ・ピケティ ) ノンフィクション
吃的美德:餐桌上的哲學思考/商周出版/The Virtues of the Table/Julian Baggini ノンフィクション
血之袐史:科學革命時代的醫學與謀殺故事/網路與書/Blood Work/Holly Tucker ノンフィクション
我答應/寶瓶文化/La promesse de l’aube/Romain Gary ノンフィクション、伝記
長頸鹿的脖子/大塊文化/Der Hals der Giraffe/Judith Schalansky ノンフィクション、科学
哈德良回憶錄/衛城出版/Memoires d’Hadrien/Marguerite Yourcenar 小説
為什麼上街頭?新公民運動的歷史、危機和進程/商周出版/The Democracy Project/David Graeber ノンフィクション
森林袐境:生物學家的自然觀察年誌/商周出版/The Forest Unseen/David George Haskell ノンフィクション
美麗與哀愁:第一次世界大戰個人史/衛城出版/Stridens Skonhet Och Sorg/Peter Englund ノンフィクション
太多幸福/木馬文化/Too Much Happiness/Alice Munro(邦訳『小説のように』アリス・マンロー) 短篇小説

生活書全般(10タイトル)

今回は台湾本と翻訳本の比率は半々でした。日本の翻訳本が2冊選ばれました。

タイトル/作者/出版社/原題/作者
你的孩子不是你的孩子/吳曉樂/網路與書
庖廚食光/宇文正/遠流出版
風土餐桌小旅行/洪震宇/遠流出版
社企力(Power of Good)/社企流(Social Enterprise Insights)/果力文化
酒途的告白(Keep on Drinking)/黄麗如/大辣出版
廿五元的奇蹟/好人出版/The International Bank of Bob/Bob Harris
我的兩個媽/基本書坊/My Two Moms/Zach Wahls、Bruce Littlefield
慢療:我在深池醫院與1686位病患的生命對話/漫遊者文化/God’s Hotel/Victoria Sweet
我要牠們活下去/本事文化/ゼロ! こぎゃんかわいか動物がなぜ死なねばならんと? /片野ゆか
蟬世代/臉譜出版/音楽と漫画と人/戸田誠二

児童書&YA書部門(10タイトル)

今年は台湾本と翻訳本の比率は2:8。例年のように翻訳ものが多くて、台湾オリジナル作品にも、まだまだ伸びる余地があるでしょう。

タイトル/作者/出版社/原題/作者
只有一個學生的學校/文、圖:劉旭恭/典藏藝術
喀噠喀噠喀噠/文、圖:林小杯/典藏藝術
火車頭/格林文化/Locomotive/Brian Floca
阿黛兒與西蒙巴黎放學記/水滴文化/Adele & Simon/Barbara McClintock
神奇的毛線/遠見天下/Extra Yarn/Mac Barnett、Jon Klassen
木偶師/遠見天下/Splendors and Glooms/Laura Amy Schlitz
夏天的規則/格林文化/Rules of Summer/Shaun Tan
凱迪克:永不停筆的插畫家/國語日報社/Randolph Caldecott/Leonard S. Marcus
富士山之歌/青林國際出版/富士山うたごよみ/俵万智(著)・U・G・サトー(イラスト)
說謊的阿大/天下雜誌/うそつき大ちゃん/阿部夏丸(著)・村上豊(イラスト)

生活書全般、児童書とYA書部門は中国語と翻訳の区分はなく、10冊ずつの受賞でした。翻訳本の原著者は、ほとんど受賞式には出席できなかったようですが(台湾の編集者が代わりにトロフィーを受け取りました)、メッセージやビデオを寄せて受賞した喜びを語っていました。受賞理由は公式サイトで、ひとつずつ公表されています。またぜひ、台湾の書店に行ったとき、手に取って自分のベストテンを考えてみては如何でしょうか。

2014年「開巻年間ベストテン(開巻好書奨)」の公式サイトはこちら
2014開巻記念写真
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黄碧君(ふぁん・びじゅん)
ellie1973年生まれ、台湾人女性。書籍翻訳・通訳家。大学卒業まで台北で暮らした後、日本の東北大学に留学、その後はアメリカ語学留学、結婚を経て、現在は日本人夫と台北で暮らす。台北で書店や版権仲介会社の勤務経験をもつ。全国通訳案内士、沖縄地域通訳案内士の資格を取得。2012年、日本人に台湾本の多様性と魅力を伝えるべく、台湾書籍を提案・翻訳・権利仲介する聞文堂LLC合同会社を設立。本は生涯の最良養分と信じて、台湾本のコーディネートと日本全国を旅するライターを目指す。
【主な翻訳作品】
辻仁成・江國香織『恋するために生まれた』幻冬舎、(中文題『在愛與戀之間』皇冠出版社)
寺山修司『幻想図書館』河出書房新社(中文題『幻想圖書館』邊城出版社)
奈良美智『ちいさな星通信』ロッキング・オン(中文題『小星星通信』大塊出版社)
青木由香『奇怪ねー台湾 不思議の国のゆるライフ』東洋出版(中文題『奇怪ね』布克文化出版社)
杉浦さやか『週末ジャパンツアー』ワニブックス(中文題『週末日本小旅行』時報出版社)
荻原浩『あの日にドライブ』光文社(中文題『那一天的選擇』商周出版社)
島田雅彦『エトロフの恋』新潮社(中文題『擇捉島之戀』台灣商務出版社)
三浦しをん『舟を編む』光文社(中文題『啟航吧!編舟計畫』新經典出版社)
松浦弥太郎作・若木信吾写真『居ごこちのよい旅』筑摩書房(中文題『自在的旅行』一起來出版社)
角田光代『あしたアルプスを歩こう』講談社文庫(中文題『明天到阿爾卑斯山散步吧』日出出版社)など。