初乗り切符から始まる台湾鉄

仮題:『初乗り切符から始まる台湾鉄道の旅』
原題:『11元鐵道旅行』
著者:劉克襄(りゅう こくじょう/リョウ・クーシャン)
出版社:遠流出版
仕様:カラー、縦組、224ページ、2009年4月初版刊行
カテゴリー:旅行、エッセイ、鉄道、自然
リンク(ネット書店):http://www.books.com.tw/products/0010433879
リンク(著者インタビュー):https://www.youtube.com/watch?v=RU0VrrbGKng

読みどころ

文=天野健太郎

鉄道マニア垂涎の地、台湾の鉄道を旅しよう!
世界三大登山鉄道のひとつ阿里山森林鉄道が走り、戦前・日本統治時代の駅舎、設備、車両が残り、日本製の新幹線が突っ走る――鉄道好きなら誰もが憧れる鉄道のメッカ“台湾”へといざなう、鉄道エッセイの決定版。

旅・自然・人情を描くことに定評のある台湾人エッセイストが、自ら描く水彩画や写真とともに、台湾各地の鉄道と駅、その町と人(地元のおじちゃん、おばちゃん、学生、観光客、そして鉄道マニアまで)、さらに土地ごとの名産品や自然を紹介する。あるときは初乗り切符だけで台湾東部のローカル駅からローカル駅へと移動して駅員と語らい、あるときは賑やかな駅を下りて、市場で地元民とふれあい、そして台湾新幹線に乗って台湾の自然の多様性と美しさを讃え、同時に環境破壊に警鐘を鳴らす。

本書の構成はまず、台湾らしい魅力にあふれ、観光地として知名度の高い賑やかな駅(平渓、知本、集集など7つ)を紹介し、続いては、乗降客が一日に数人しかないようなひなびた駅(台湾東部を中心に7つ)を訪れる。さらに台湾新幹線が切り開く新しい台湾の風景と旅情を描き、最後に台湾の駅弁や駅前の人気屋台などをお薦めする。

台湾好き、旅好きなら、本書の手書き地図や車窓風景、駅や鉄道に集まる人びとの温かなエピソードに惹かれて、きっと台湾車窓の旅に出たくなるはず! 2000年から2008年に描かれた旅行・鉄道エッセイを収録。近年の台湾鉄道ブームを先取りしたベストセラー。2009年中国時報「開巻十大好書(年間ベストテン)」選出。

目次から:

序 初乗り切符から始まる台湾鉄道の旅
台湾鉄道で一番安い切符は11元だ。そんな初乗り切符を出発点に私は、その土地土地の素朴なくらしと美しい風景を楽しむのんびり旅を10年以上続けてきた。新幹線だろうと気持ちは変わらない。どこかの駅で気安く下りて、目的もなくどんどん歩いて見よう。市場、路地、農村、自然……、世界はどんどん広がっていく。

鉄道の旅は楽しく、そして控えめなものだ。鉄道に関わる、車内や駅の近くで息づく、取るに足らないものやことはどれも、私たちが自ら手に取り、ゆっくりその楽しみを見つけてやればいい。

鉄道の旅はエコで質素だ。時間はかかるがお金はかからない。だから一番素の自分でその土地に触れることができる。そして鉄道の旅は安全で、とてもゆっくりだ。まるで人生を預けるように汽車に揺られていると、頭が柔らかくなって、世界が見えてくる。――そう、鉄道は11元で入れる秘密基地なんだ。

第1章「にぎやかな駅で」
平溪駅(台北郊外) 鉄道と並んであの小さな町を走ろう!
ランタンフェスティバルで有名な町の商店街を歩く。小さな川を小さな橋で渡る小さな鉄道を撮影しよう!

十分駅(台北郊外) 幸福駅はどこにある
ここで買える「十分-幸福」の切符だが、実際に幸福駅はあるのだろうか? 有名商店街のなかを通る線路、そして平溪線で唯一残る腕木式信号機を見に!

知本駅(台東県) わたしのふるさとは遥か遠くに
温泉で有名な知本。休日は観光客で賑わうこの駅に流れる原住民族語のアナウンス。アミ族の少女はこの駅から都会へと旅だった……    →部分訳を読む

鳳山駅(高雄市) 魅力たっぷり!兵隊市場
清朝末期より栄え、戦後は近くに基地が置かれたため、たくさんの兵隊さんが買い物に来るようになった市場。三角形で区切られた迷路のような路地を散策しよう!

高雄駅(高雄市) 古い駅と懐かしのバス切符売場
曳家により現在の場所に移動・保存された日本統治時代建造の高雄駅舎。しかし著者が注目したのは、もはや見ることの少なくなったバスの切符売場だった。

集集線(台湾中部南投県) 女子高生たちと一緒に旅すれば
都市には郊外列車がつきもの。台北の学生が授業をサボって淡水へ遊びに行ったように、集集線で出くわした女子高生たちはキャッキャとおやつや自分撮りに夢中。

大甲駅(台中市郊外) 媽祖〔まそ〕より市場を歩いて見よう
媽祖信仰で有名な大甲。かつて大甲帽[イグサ帽。大甲の名産で日本統治時代多くの外貨を稼いだ。]で活況に沸いた痕跡や名産の芋を探す。

第2章「ひなびた駅で」
三貂嶺駅(台北郊外) 世界でいちばん孤独な駅
世界がミレニアムに沸く1月1日、わざわざこのひなびた駅にやってきた著者だが、お目当てだった硬券切符は日本人鉄道マニアに買い占められていた。

牡丹駅(台北郊外) 最後の硬券を求めて
山登りのためにたまたま訪れたその日は、本駅で硬券を売る最後の日であった。台湾人鉄道マニアが集まり、普段静かな駅は突然のにぎわい。

二結駅(宜蘭県) なにもすることがない駅
百年の歴史を持ち、かつては穀物輸送で栄えた駅だが、現在は下車する人も無い。しかし駅員のサービスはよく、地元民の熱意で周辺の農業風景は守られている。

和平駅(花蓮県) 失われた平和な山
美しい台湾東海岸に突如現れるコンクリート工場群。この駅の乗客はその通勤客しかいない。この地はかつてタロコ族が暮らしていたが、反対運動虚しく集団移転させられた。

山里駅(台東県) 花東線の幻の駅へ
なにもないこの駅で出会った原住民の人びと。教会ですごす静かな時間。

後壁駅(台南市郊外) おじいが元気な米の村へ
台湾で大ヒットした農業記録映画『無米楽』の舞台へ。もう二期作の一期目が終わって、みんなのんびり。ふと道を尋ねた商店では、見ず知らずの旅人なのに椅子と茶を出されて……

新埔駅(苗栗県) 海に一番近い駅
海に一番近い駅へ向かう列車には、天秤棒と籠を下げた農民たちと一緒だった。この地の名産、かぼちゃを市場で売って帰ってきた人びとだ。

第3章「台湾新幹線の車窓から」
ぼくは台湾新幹線の常客
台湾新幹線は実は電波が入りにくく、むしろ静かな車窓の旅を満喫できる。まるでカルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』のように……。

台湾新幹線の車窓旅は、自然ドキュメンタリー映画のように
台湾新幹線の窓から台湾の多彩な自然を楽しむことができる  →部分訳を読む

新幹線に乗ってアブラギリの花を見に行こう
五月なら、新幹線新竹駅から山道へ。客家人が大事に育てているアブラギリの花を見よう。

冬の終わり、午後二時半に新幹線に乗れば
冬の終わり、車窓からは菜の花が見えるし、俯瞰するように南北の山を観察できる。

新幹線駅の近くで見つけた神さんの祠
新幹線台中駅を下りたらと、まだ区画整理中の空き地にひばりが舞い、由緒ある祠が見つかった。

第4章「弁当を探して」
侯硐〔ホウトン〕駅前にある2軒の麺屋(台北郊外)
駅前にある昔ながらの素朴な麺屋。人情と味はどうやって守られてきたのか。

平溪線で採れる矢のようなタケノコ(台北郊外)
平溪線はランタンや旧炭鉱が有名だが、実は人知れぬタケノコの里だった。

宜蘭線の車中で買う駅弁(宜蘭県)
宜蘭線で花蓮へ向かう車中には、有名な“モグリ”の駅弁売りがいると聞いた。夏はアイスを売り、それ以外の季節は弁当を売るという、噂のおっちゃんは実在する?

大きな沼、小さなエビ、そして池上弁当(台東県)
台湾の米どころ「池上」――かつてはそこに美しい沼があり、名産のエビが採れた。しかし開発・観光化に失敗し、生態系も失われた。地元民の自然を取り戻すための努力。

ますます人気沸騰の奮起湖老街(阿里山鉄道)
昔ながらの通りに美味しい屋台が並ぶ。商売熱心で年々新しい味を開発されている。新しい駅弁や手作り豆腐の新製品、そしてヒノキ珈琲を味わうのもよし。

ぼくは駅弁で生きている(台湾各地)
台北駅から新幹線に乗るとき、昔風から新作まで、駅弁選びにいつも迷ってしまう。ほかにも花蓮、高雄、台南とこだわりの食材と特色あるおかずを選ぶ楽しみ。

劉克襄著者略歴:
◯劉克襄(りゅう こくじょう/リョウ・クーシャン)
1957年、台湾台中生まれ。詩人、小説家、自然エッセイスト。文化大学新聞学部卒業。「中国時報」文芸欄などに携わる。中国時報文学賞、台湾現代詩賞、呉三連文学賞など受賞多数。
二二八事件と戦後の政治的抑圧に苦しんだ人びとを代弁した詩で注目され、80年代より詩、自然エッセイ、歴史書、小説、絵本、旅行記、登山ガイドなど多岐にわたるジャンルで40冊以上の著作を発表。平易で簡潔な美しい文体で、台湾人の知らない台湾(自然、歴史)を伝える。現在は台北郊外に住み、自然観察、撮影・、絵画などを楽しみ、子供たちを相手に自然教育を行う。また台湾の古い紀行文や古道にも造詣が深い。
代表作はエッセイ『男が行く市場(男人的菜市場)』、『台湾のなかを(裡台灣)』、『十五個の小惑星(十五顆小行星)』、詩集『革命青年』、動物小説『ザトウクジラのハレンモモ(座頭鯨赫連麼麼)』、『マメネズミ、家に帰る(豆鼠回家)』、歴史研究『外国人フォルモサ見聞記(橫越福爾摩沙)』、『台湾の古道を踏破する(臺灣舊路踏查記)』、登山ガイド『北台湾の知らない山道を歩く(北台灣漫遊:不知名山徑指南)』、絵本『うんち虫(大便蟲)』など(邦訳なし)。

本書の日本語版の刊行予定はまだありません。
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執筆者プロフィール

天野健太郎(あまの けんたろう)
1971
年、愛知県生まれ三河人。京都府立大学文学部国中文専攻卒業。2000年より国立台湾師範大学国語中心、国立北京語言大学人文学院へ留学。帰国後は中国語翻訳、会議通訳者。聞文堂LLC代表(ツイッターアカウント「 @taiwan_about 」)。台湾書籍を日本語で紹介するサイト「もっと台湾(http://www.motto-taiwan.com )」主宰。訳書に『台湾海峡一九四九』龍應台著(白水社)、『交換日記』張妙如、徐玫怡著(東洋出版)、『猫楽園』 猫夫人著(イースト・プレス)。『日本統治時代の台湾』陳柔縉著(PHP研究所)。俳人。