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「佐川男子より台北男子」

『台北男孩,這麼漂亮』陳昭旨写真・文(啟動文化、2012年)

 文=天野健太郎

台湾にいたころ、しょっちゅう訊かれた質問がある――「台湾人女性と日本人女性、どっちがキレイ?」 男女を問わず何回も訊かれたけれど、筆者の答えはいつも判を押したよう――「化粧しなければ台湾人女性、化粧すれば日本人女性。」

では台湾人男性はどうか? 昔の印象は、“右も左もぽっちゃりメガネくん”であったが、台湾ドラマの人気を見るに、どうやら最近は違うらしい。そんなところで一冊の写真集、『台北男孩,這麼漂亮(台北男子はこんなにキレイ)』陳昭旨(Jozy Chen)写真・文(啟動文化、2012年)を手にした。トム・リン監督の『九月に降る風』など台湾映画のスチール撮影で活躍する女性フォトグラファーが、6ヶ月の時間をかけて「キレイ」な台北男子を百人見つけ出し、街撮りし、しかも上半身を脱がせた力作である。

王子様、ロッカー、カジュアル、草食系、裏原宿、都会派、ワイルドに分類された20代が中心のイケメンたちは、本当に台北を歩けばそこらの通りやお店でひょっこり出逢えそうな素人たちで、モデル、バンドマン、デザイナー、美容師、ショップ店員、学生、サラリーマンからよりどりみどり。また愛嬌たっぷりの台湾人にしては珍しく、無表情にレンズを見つめるショットがクールだ。

表紙を飾るのはNo.005、王子様タイプの張くん(24歳、175センチ、63キロ)。兵役を終えたばかりのモデルさんで、本文中では彼もしっかり上半身ヌードを披露している。写真2カット以外は簡単なコメントがあるだけなので、中国語は読めなくても大丈夫。佐川男子より台北男子を愛でる女性(へのプレゼント)にもってこいの一冊である。bcover201301beautifulboy

著者はとにかく、かっこいいキレイな男の子を撮りまくりたいと、フェイスブックで募集をかけ、イベントやショップを邪な目で訪ね、道端でいい男を見かけては「モデルになってくれない? 脱げる? 携帯教えて」 と口説き落とし、彼らひとりひとりに似合う街角を探して撮影を敢行した。実は本書できらりと光るのは、彼らの背景に映り込んだ何気ない台北の風景である。フルショットで捉えた彼らの足元を彩る緑の苔、駐車禁止の赤いライン、あるいはバックで存在感を示す赤の玄関、鬱蒼と茂る南国の植物、あふれかえる落書きアートや路駐バイク……。

当代台湾で最良のエッセイストと目され、旅、食、街をスノッブに語る舒国治〔じょ・こくち〕は、台北を「絶えず変容し続け、いっときとして同じ状態が続かぬ街」と看破しているが、本書が写しとった風景もたかだか半年たっただけですでにいくつかは消えてしまっている。著者は言う、「台北男子を記録しているつもりが、知らず知らず、台北そのものを記録していた」。

 

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プロフィール

天野健太郎(あまの けんたろう)
1971
年、愛知県生まれ三河人。京都府立大学文学部国中文専攻卒業。2000年より国立台湾師範大学国語中心、国立北京語言大学人文学院へ留学。帰国後は中国語翻訳、会議通訳者。聞文堂LLC代表(ツイッターアカウント「 @taiwan_about 」)。台湾書籍を日本語で紹介するサイト「もっと台湾(http://www.motto-taiwan.com )」主宰。訳書に『台湾海峡一九四九』龍應台著(白水社)、『交換日記』張妙如、徐玫怡著(東洋出版)、『猫楽園』 猫夫人著(イースト・プレス)。『日本統治時代の台湾』陳柔縉著(PHP研究所)。俳人。