マンゴーツリーハウス

仮題:『マンゴー・ツリーハウス』
原題:『花街樹屋』(「色街のツリーハウス」の意)
著者:何致和
出版社:寶瓶文化
仕様:白黒、縦組み、268ページ、2013年初版刊行
カテゴリー:中国語文学(小説、少年、都市)
リンク(博客來):http://www.books.com.tw/products/0010590483

読みどころ:
1980年代台湾、活気と猥雑さがあふれる繁華街に育った三人の少年は、秘密のツリーハウスを作り、そこである作戦を企てる。少年たちは親の言いつけに逆らって街を出て、自由を求める冒険の旅に出た……。
2歳の子供を育てる主夫の「ぼく」は、幼なじみのひとりが自殺したことをきっかけに、12歳のときに作った秘密のツリーハウスと、なにかに駆られるように決行した冒険のことを思い出す。どうして彼は死を選んだのか? それはあのときすでに決まっていたのだろうか? 「ぼく」は子供の成長を見守りながら、少しずつ自らの過去の記憶を復元していく。記憶とはこんなに不完全で、暗号のように時間をかけて解読するしかないのだ。ぼくたちはあの街を恨んでいたのか、愛していたのか……。 家族はぼくたちを縛っていたのか、守っていたのか……。 ぼくは友人のことを本当に知っていたのだろうか?
台湾の新世代作家“四天王”の一人が、丁寧なキャラクター造形と緻密なストーリー構成で少年たちの友情と成長を描き、ユーモラス(でテクニカル)な文体で街にあふれるエピソードをつなぐ。登場人物の内面の変化が街の歴史と重なり、物語は静かなうねりとなって読者の心をさらう。小説的おもしろさに満ちた傑作長編。

あらすじ:
都会の端っこに、ゴミ箱をひっくり返したようなごちゃごちゃした街があった。掘っ立て小屋のような家が雑多に広がり、寺と夜市が活気を集め、猥雑な色街を抜けると大きな川があった。そんな昔ながらのコミュニティで育った少年たち――「ぼく」(方博鈞)、イーヤ(姜翊亜)、ファン(林鑫煌)は、それぞれの家庭の問題に悩みながら、いつもいっしょに遊んでいた。イーヤは父を早く亡くし、母からスパルタ式にピアノの練習をさせられていた。古タイヤで屋根を押さえるほどボロくて、防音もない(路地が騒がしくてその必要もない)家である。12歳のとき、イーヤは突然2人に提案した――裏の廃屋に高く聳えるマンゴーの木に小屋(ツリーハウス)を作ろう! きっとそこから未来が見えるさ! 3人の企てはそうやって始まった。

語り手の「ぼく」は、暗号理論を教えていた大学が学部閉鎖の憂き目に遭い、現在は育児に専念している。2歳のリンリン(菱菱)と楽しく毎日を過ごしているが、勤め人の妻・アン(杏娟)とは教育方針でつまらない言い争いが続く(しかも話し合って決めたのに、ぼくが仕事をしないことに不満があるらしい)。そんななか、ピアニストとして成功していたイーヤが自殺した。葬儀場でもうひとりの幼なじみで、メディアプロデューサーとして成功しているファンと行き逢った。高級スポーツカーにセクシーな美女を乗せたファンはぼくに言った。「イーヤが自殺することは、前からわかってたんだ」 ぼくはそれをきっかけに、まるで暗号を解くように、過去の記憶を手繰り始めた。

ぼくの最初の記憶は3歳のこと。神棚の前に跪き、100元を盗んだと両親と祖母から罵られている場面から人生は始まる。ぼくの父は映画館のモギリで、端的に言うとうだつのあがらない酒飲みだった。母は、憎々しげに繰り言を言った――「こんな街、今すぐ出て行きたい!」(でも、父は死ぬまでその望みを叶えてやることはなく、母は結局今も同じ家に住んでいる)。 母が忌み嫌っていたのは、夜市の先にある色街だった。当時は合法だった売春宿があり、狭い路地には男たちが蠢き、左右の戸口には色鮮やかに着飾った女たちがいた。母はぼくにそこへ行くことを禁じた。夜市の先の信号から北へは行ってはいけない、と。

3人はツリーハウスを作り、その上から自分たちが行くことを禁じられていた場所を眺めた――秘め事のように見え隠れする色街、屋上のトタン屋根の小屋(ファン)、街の終わりのもっと先にある川(イーヤ)。そして、まるで自由を求める革命家のように、親が決めたその境界線を越え、ぼくらは外の世界へと歩き出した。
夜市に曲芸団がやって来て、公演を始めた。目玉はオランウータンの芸だった。イーヤはそのオランウータンに同情し(毎日ピアノのレッスンを強要されている自分と重ねあわせ)、ぼくとファンにオランウータンを救出しようと提案する。
秘密のツリーハウスで、オランウータン救出作戦の準備が着々と進んでいたころ、大事件が勃発した。街一番大きなお寺が警察隊に囲まれている。そう、戒厳令解除を訴える反政府活動家たちの座り込みだった。ファンの父さんもきっとそのなかにいるはずだ。ファンは言った。「チャンスは今しかない!」 街中の大人たちが野次馬になっている今なら、オランウータンは誰にも見つからずに運び出せるはずだ! 3人は救出作戦を決行した。
 

 
HoChihHo著者:
何致和(ホー・チーホー/か・ちか)
1967年、台湾・台北萬華生まれ。小説家、翻訳家。中国文化大学中国文学部創作コース講師。中国文化大学英文科卒業、東華大学大学院創作・英文学研究所修了。編集者を経て、翻訳と二足のわらじを履きながら、創作活動を開始。
著作に長編小説『白色城市的憂鬱』(2005年)、『外島書』(2008年)、短篇集『失去夜的那一夜』(2002年)がある。聯合報文学賞、寶島小説賞、教育部文藝創作賞など受賞多数。訳書にドン・デリーロ『ホワイト・ノイズ』、マーティン・エイミス『時の矢 ― あるいは罪の性質』、キャロリン・パークハースト『バベルの犬』など。

本書の日本語版の刊行予定はまだありません。
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