「映画で見る中華商場」

台北のランドマークであった中華商場は映画にもたびたび登場する。『歩道橋の魔術師』本文(第十話)でも触れられる通り、ホウ・シャオシェン監督『恋恋風塵』(1987年)には主人公のふたりが中華商場の靴屋で買い物をする場面がある。

 

エドワード・ヤン監督『恐怖分子』(1986年)では商場の建物は映らないが、主人公が映画のクライマックスで歩道橋を渡り、西門町へ向かう。香港のジョン・ウー監督『男たちの挽歌』(DVDリンク)(1986年)では、鉄道にかかる歩道橋でチョウ・ユンファが新聞を読んでいる。

 

さらに、ツァイ・ミンリャン監督『青春神話』(1992年)では、解体直前の中華商場が何度も登場する。冒頭、バイクは成都路から中華路へ折れ、背後に信棟と義棟が映しだされる。ほかにもMRTの工事現場が何度もカメラに捉えられる。
このように80年代、台湾ニューシネマ(と香港)の巨匠の作品に中華商場が映しだされる一方、建築直後の姿は、李行監督『兩相好』(DVDリンク)(1962年)に登場する。

 

また日本映画では、石原裕次郎主演、松尾昭典監督『金門島にかける橋』(DVDリンク)(1962年)と千葉真一主演、高倉健出演、深作欣二監督『カミカゼ野郎 真昼の決斗』(1966年)の台北ロケシーンに映しだされる。どちらも一瞬ではあるが、千葉真一が中華商場の信棟から義棟へと、ロータリーを駆け抜けるシーンは圧巻だ(屋上「國際牌」ネオン棟の基礎が見える)。

 

最後に中華商場が登場する小説に、白先勇の長編『孽子』(1983年刊行、邦訳は国書刊行会)があり、演劇では中華商場で育った劇作家・李国修による自伝的作品『京戯啓示録』(1996年初演)があることを付け加えておく。
今は存在しない中華商場もこうした小説と映画に残された断片から想像することができる。

白水社《エクス・リブリス》通信vol.14より
 

 

 
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