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「読めなくても楽しい本」

『因愛料理 給小孩的節氣菜譜』種籽節氣飲食研究室(悅知文化、2013年)

 文=天野健太郎

翻訳には時間がかかる。小説や歴史ものなど、すべてがうまくいっても年に3冊が限度のようだ(そして、けっしてうまくはいかない)。 素晴らしい台湾の本はたくさんあるので、どんどん日本の読者のみなさんに紹介したいわけだが、スピード感のなさが歯がゆい。
小説、歴史、エッセイなどはあくまでも言葉が主役なので、時間をかけて翻訳するほかないが、台湾にはそれ以外にビジュアルが楽しい本がたくさんある。とりわけ、おおらかでかわいいイラストやリアリズムの写真、そして自由で思い切りのいい装幀……。中国語がわからない編集者や、偶然居合わせた一般の人に見せても、みんな結構おもしろがってくれる。

そういうことなので、台湾の本(中国語の原著)を展示する「読めないのに楽しい! 台湾ビジュアルブックフェア」を4月から5月にかけて東京で開催した(大阪では6月に開催)。最近は雑誌の台湾特集で誠品書店や古書店が取り上げられたりするが、つまるところは空間の紹介(雑貨屋的扱い)であって、その空間にどんな本が置かれ、売られ、読まれているかは想像もされない(日本の本の中国語版しかないとでも思っているらしい)。だから、無理やり、どさっと、浴びせるように台湾の本を見せるわけである。

イラストもの、装幀もの、写真ものと大きく3つにジャンル分けし、本欄で紹介済みの定番を中心に悩みに悩んで30冊ほどのビジュアルブックを厳選した。3月は台湾出張があったので、このフェアのために何冊も新しく仕入れた。
例えば、『微笑刻痕』(時報出版)は有名作家(兼テレビキャスター)の陳文茜のエッセイ、らしい(“装幀買い”なので、中身はどうでもいいのである)。台湾では小ぶりと言える、新書サイズの角が四分円に切り取られ、天地・小口とともに赤く染められている。表紙は黒の地に、ダイヤが光っている。箔を入れたうえに、レーザー加工してあるのだ。大手出版社がベストセラー作家のために本気を出せば、お茶の子さいさいということだろう。
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因愛料理 給小孩的節氣菜譜』種籽節氣飲食研究室(悅知文化)はイラストで買った。子供向けの季節のレシピを綴るかわいい本だが、料理ごとの食材写真が切り抜かれ、そこにカラフルでラフなイラストを重ねて描かれている。ところが、買ってからひとつ発見した。折り込まれたカバーを広げるとポスターになるのだ(カバーと帯が一体化している。裏表カラー印刷)。台湾のデザイナーたち、編集者たちは、思いついたアイデアを実行するときにてらいがない。印刷コストが安いとかじゃなく、自分に枠を作らない、実直なで自由な気風を、手にとって感じていただけたらと思う。

 

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プロフィール

天野健太郎(あまの けんたろう)
1971
年、愛知県生まれ三河人。京都府立大学文学部国中文専攻卒業。2000年より国立台湾師範大学国語中心、国立北京語言大学人文学院へ留学。帰国後は中国語翻訳、会議通訳者。聞文堂LLC代表(ツイッターアカウント「 @taiwan_about 」)。台湾書籍を日本語で紹介するサイト「もっと台湾(http://www.motto-taiwan.com )」主宰。訳書に『台湾海峡一九四九』龍應台著(白水社)、『交換日記』張妙如、徐玫怡著(東洋出版)、『猫楽園』 猫夫人著(イースト・プレス)。『日本統治時代の台湾』陳柔縉著(PHP研究所)。俳人。