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「私は男の子のお母さん」

原題:『我是男孩的媽媽』

mother-style-32-33-1母親業をやっていくには、子供が男と女ではぜんぜん違う。男の子も女の子も同じ様にすばらしい(もしくは同じ様にやっかい?)と言ったって、男の子の母親と女の子の母親では、過ごす生活が違う。

 以前に気づいたことだが、育児書を出していて、しつけについて書いているお母さん達の多くは、いや、ほとんど全員と言えるほどが娘をもつ人なのだ!娘だけでなければ、娘が少なくとも1人と息子という組み合わせなのだ。
mother-style-32-33-2 たとえば林奐均1は4人2の娘がいる。蔡穎卿3は2人の娘がいるし。陳之華4、番紅花5、『タイガー・マザー(中国語題:虎媽的戰歌)』6の作者・虎媽7だって2人の娘を産んでいるのだ!
 私は育児書を書く彼女たちをとても尊敬しているし、その教育法はすばらしい。ただ、私は彼女たちの共通のバックグラウンドに気づいた――皆、娘がいる。

 このことから推論するに、娘には比較的、教育理念を実践しやすいのでは?それに対して息子はまさに「ごんたくれ」!ごんた過ぎてその両親はしつけについて、「私みたいに『こうすれば良い』のです!」とは自信がなさすぎて言えないのだ……。
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 この様な結論に至った私に、私の叔母は納得いかないらしい。だって彼女には超聞きわけのいい3人の息子と、彼女を悩ませる1人の娘がいるのだ。叔母は言う…「じゃあ、龍應台には息子が2人いるんじゃないの?あそこは一緒に本まで出しているじゃない!」8
 もちろん、全ての統計には例外があり、私の見解は無責任な実地調査に過ぎない。でも、龍應台の例については、叔母の言い分に真っ向反対だ。

mother-style-34-35-1 女の子はとにかく扱いやすい。女子校の教師は男子校の教師のように強く叱る必要もない。言い聞かせようとして、すぐ強く叱るのは、細やかな配慮に欠ける上に、子供の心に響かない。

mother-style-34-35-2 ある時小福[著者の息子]を連れて友人宅に行き、ほかの子供と遊ばせたことがある。年頃が同じくらいの子供達が走り回りあまりに無茶苦茶に遊ぶので、私がこわい顔で「静かにしなさい!おもちゃを片付けて!こんなに走り回ったら危ない!聞いてるの!?」と注意した。
mother-style-34-35-3 そばで聞いていた女の子は皆静まったが、男の子達だけは耳栓をしているみたいに一言も聞こえないようで、駆け回ってふざけ続けた。
 その時、私は小福の手をつかんで、厳しく彼に気をつけるよう諭したが、彼は楽しい遊びに熱中している最中で状況がつかめていなかった。しかし隣に居た女の子が「道理をわきまえた」表情をしたのがちらっと見えた。彼女は小福に小さな声でこっそり「小福のお母さん怒ってるよ。」と言ったのだ。

mother-style-34-35-4 このことからよく分かったのが、女の子は比較的センシティブで、状況を把握できているということ。男の子は言ってみれば犬みたいで、言うことを聞く子もいるけれど、お母さんが大きな声で彼らの注意を引いたり、命令したり、ホネを投げて追いかけさせたり、更に繰り返し「訓練」を重ねる必要がある。

 (略)

 

 

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執筆者プロフィール

恩地万里(おんじまり)
アメリカ・ノースカロライナ州ウィンストン・セーラム市生まれ。医療分野を中心とした翻訳およびレビューサービス、「silex 知の文献サービス」(http://silex-transl.com/)代表。1999年に台湾、2005年に北京に留学。男女の双子の母親。

  1. 林奐均〔ジュディ・リントン〕。台湾民進党の元党首・林義雄の娘。「林宅血案」の唯一の生還者。作家、音楽家。著作に『百歲醫師教我的育兒寶典(100歳の医師が教えてくれた育児のすべて)』(如何、2006年)など。(訳者注) []
  2. 現在5人(訳者注) []
  3. 蔡穎卿〔さいえいけい〕。食育や生活哲学に関する著作を多数もつ。『媽媽是最初的老師(ママははじめての先生)』(天下文化、2007年)、『廚房之歌(キッチンのうた)』(天下文化、2007年)等。(訳者注) []
  4. 陳之華〔ヨランダ・チェン〕。作家。著作に『一起看見不同的世界:芬蘭、台灣、澳洲,陳之華與女兒的學習之旅(一緒に色んな世界を見よう―フィンランド、台湾、オーストラリア、陳之華と娘の学びの旅)』(天下文化,2013年)など。(訳者注) []
  5. 番紅花。作家。幼いころから新聞や雑誌に文章が掲載される。OLを経て主婦となり、2009年から生活や育児に関するブログをはじめ、人気となり数々の賞を獲る。著作に『廚房小情歌(台所の小さなラブソング)』(遠流、2013年)など(訳者注) []
  6. 原題Battle Hymn of the Tiger Mother(邦訳は朝日出版社、2011年)(訳者注) []
  7. 蔡美兒〔エイミー・チュア〕。(訳者注) []
  8. 龍應台・安德烈共著『親愛的安德烈(親愛なるアンドリュー)』(天下雑誌、2007年)(訳者注) []